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野球肘は、投球側の肘に痛みが生じる疾患の総称で、関節の炎症や靭帯損傷、神経障害など様々な病態を含みます。

経験豊富な手外科専門医が患者様のライフスタイルに合わせた治療を行います。手術の場合は、内視鏡下の病変部の切除や靱帯再建、神経剥離術などを病態に応じて行います(全身麻酔で行うため入院手術)。
また、PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)療法が有効な場合があります。

どんな症状があるの?

投球動作で痛みを認め、全力投球や繰り返しの投球が困難になります。
痛みの部位により病態が異なります(内側型、外側型、後方型)。

内側型

肘の内側にある靱帯(内側側副靱帯)を損傷することにより痛みが生じます。靱帯の付着部で剥離骨折を生じている場合もあります。プロ野球投手がこの怪我で手術を受け、ニュースなどで報道されることがしばしばあります。
また、肘の内側にある尺骨神経が投球動作を繰り返すことで障害され、痛みや手の小指側のしびれが生じることがあります。

外側型

肘の外側の骨の関節面が壊死を起こす上腕骨小頭(しょうとう)の離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)によって生じます。
また、剥がれた軟骨が関節内遊離体になると、肘の動作時痛やひっかかりなど症状様々な症状が出ます。

後方型

投球動作のフォロースルーの際、肘を伸ばしきった時に肘の後方で骨同士(上腕骨と尺骨)がぶつかり痛みが出ます(後方インピンジメント)。

原因は?こんな人は要注意!

野球をはじめとした投球・投擲(とうてき)動作を伴うスポーツ(バレーボールやハンドボール、テニス、槍投げなど)を行う方に多く認めます。野球では投手に最も多く発生しますが、捕手や野手に生じることもあります。

どうやって検査するの?

野球肘の診断は問診や身体所見がとても大切です。特に、疼痛部位やどの動作で痛みが出現するかが診断・治療に重要になります。当院では、問診や身体所見に加えてまず手関節X線撮影を行い関節変形の評価を行います。X線では離断性骨軟骨炎や骨棘(こつきょく)、遊離体などが認められる場合があります。また、超音波画像やCT、MRIにより靭帯損傷や炎症など含めて、病変部をより詳細に評価します。

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎のX線、CT
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎のX線、CT
肘関節後方の骨棘と遊離体(後方インピンジメント)
肘関節後方の骨棘と遊離体(後方インピンジメント)

どうやって治療するの?

症状が軽い場合

投薬治療

痛みを和らげる薬を処方します。

注射

ステロイド注射が短期的には有効な場合があります。しかし、同じ部位にステロイド注射を繰り返し行うと、組織が脆弱になり靱帯損傷などを引き起こす可能性があるため、当院では回数を制限しています。
また、当院で行っている再生医療としてPRP療法が有効な場合があります。この注射は自費診療にはなりますが、ステロイドのような組織損傷を引き起こす危険性はありません。

体外衝撃波治療

病変部に衝撃波を複数回照射することで、組織修復や血管新生などの作用により痛みが改善する場合があります(自費診療)。

生活指導

スポーツの休止やフォーム改善などを指示します。

症状が進行している場合・早期に根本治療を希望された場合

スポーツ継続が困難な場合、早期に根本的治療を希望されるような場合などでは手術療法が勧められます。
手術では、病態に応じて異なる手術を行っています。

内側型

内側側副靱帯に対する靱帯再建術や尺骨神経障害に対する神経剥離術、神経前方移動術を行います。

外側型

内視鏡下の遊離体摘出や炎症組織である関節滑膜の切除を行います。
壊死を起こした病変部に対しては内視鏡下のドリリングや、内視鏡下あるいは直視下に骨軟骨柱や肋骨肋軟骨移植などを行います。

遊離体の摘出
遊離体の摘出
内視鏡下のドリリング
内視鏡下のドリリング
離断性骨軟骨炎に対して、膝から採取した骨軟骨柱を直視下に移植
離断性骨軟骨炎に対して、膝から採取した骨軟骨柱を
直視下に移植

後方型

内視鏡下の遊離体摘出や骨棘切除、炎症組織である関節滑膜の切除を行います。

骨棘の切除
骨棘の切除

当院では全身麻酔で手術を行っており、入院期間は3日間程度です。
術後はシーネ固定を行いますが、病態により固定期間が異なります。