文字サイズ
拡大
標準
背景色

糖尿病の治療は、食事や運動などを通し、患者さまの日々の生活に大きく関わることになります。長期間に及ぶこともある治療を継続しながら、患者さまの生活の質を健康なときと変わらない状態に保つため、糖尿病センターが大切にしているのが「楽しさ」です。

多職種連携で糖尿病診療を支える

糖尿病は失明や神経障害、動脈硬化症など、全身に合併症が生じる疾患であり、治療にあたっては糖尿病専門医だけではなく、眼科、腎臓内科、脳神経内科、血管外科、循環器内科、皮膚科、形成外科、整形外科など、多くの診療科と協力しなければいけません。そのため、当院では糖尿病科ではなく、「糖尿病センター」として、診療科の枠にとらわれないチーム医療を提供しています。

センターという枠組みがあることで、医師だけでなく、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、健康運動指導士、臨床心理士など幅広い職種のスタッフが参加し、全員で糖尿病診療を支えているという意識をもって、日々治療に取り組んでいます。

看護師や管理栄養士が患者さまの診察を行うわけではありませんが、ミーティングなどを通して全員が常に情報を共有し、医師の治療方針や意図をくみ取りながら、栄養相談を受けたり、運動指導に取り組んでいます。医師もスタッフを全面的に信頼し、患者さまごとの健康指導を安心して委ねるという体制が実現しています。

また、当センターでは、治療にとどまらず、予防も重視しています。糖尿病は発症前に適切な対処をすれば、正常な状態に戻すことができます。「健康診断で血糖値が気になった」「食生活に不安がある」「低糖質に関心がある」といった方でも、当センターにご予約さえいただければ、外来診療をお受けしています。

患者さまが生活を楽しんでいるか、という視点

当センターがめざしているのは、「楽しくて続けたくなる糖尿病治療」です。糖尿病治療の指導では、合併症の恐ろしさなどを強調するため、患者さまに「恐怖」を覚えさせ、行動を変えさせようとすることが少なくありません。短期的には効果があるかもしれませんが、糖尿病のような、長期間の治療でモチベーションを維持するには、「楽しさ」が不可欠です。

運動好きの人は、雨が降っていても走りに行くことがありますが、それは楽しいからにほかなりません。楽しいから続けることができ、障壁を乗り越えることもできるのです。だらこそ、当センターでは楽しさを追求しています。

初診で2型糖尿病と診断されると食事指導を受けることになります。その際、過体重や肥満の方には「糖質制限」か「カロリー制限」のどちらかを選択していただきますが、標準体重の方には「糖質制限」をおすすめしています。

diabetes_center01.jpg

食事という日々の生活に直結するものだからこそ、患者さまが実行できる食事療法を選んでいただくことが重要です。多くの患者さまが血糖値の変化を気にするあまり、「その食事で自分の生活は楽しいか」という視点を忘れてしまいがちです。診察では「今の食生活はつらくないですか」「実は食べたいものがありませんか」といったお話をうかがい、量の調節や材料の質を変えるなど、楽しく食べながら治療を継続できる方法を、患者さまと一緒に模索しています。

食事療法、運動指導を組み合わせ、短期間で血糖値を安定させる

さらに、当院は他の糖尿病治療施設と異なり、院内に筋力トレーニングや有酸素運動ができる運動施設を完備しており、自費診療の運動指導も行っています。初診では、なるべく体を動かす程度の指導から始め、定期的な診察を踏まえ、運動が必要となると判断した患者さまには、健康運動指導士がていねいに対応します。

diabetes_center02.jpg

運動施設では多くの患者さまが参加しているため、複数人で楽しく取り組んでいただけるような運動をご提案し、ときには医師が驚くほど盛り上がることもあります。

こうして食事療法と身体活動の増加を図ることで、順調な患者さまであれば、1カ月程度で血糖値の安定などの変化が見られます。数値に変化がない場合や、なかなか安定しない場合は薬物療法のご提案をさせていただきます。

これまでの糖尿病治療では、患者さまに多くの我慢を強いる指導をしたため、それに耐えられなくなり、止められている食品を食べてしまった、運動をやめてしまった患者さまが自分を責め、治療を諦めることも少なくありませんでした。

当センターでは、これからも患者さまが楽しく続けられる、普段通りの生活の質を保ちながら健康になれるような糖尿病治療に取り組んでいきます。

関連する診療科・部門