心不全とは、心臓というポンプの働きが損なわれ、息切れやむくみが生じ、進行すると死にも至る心臓病のことです。初期段階では症状が乏しく、心臓病が見逃されることがあります。この段階を「かくれ心不全」と呼びます。
誰でも歳をとれば、心不全との付き合いを避けて通ることはできません。
北里研究所病院では循環器専門医が、それぞれの患者様に合った治療をチームで提供します。
心不全は心血管系の病気で入院される方の断トツ1位です。患者さんの急増が社会問題化しつつあり、国をあげての心不全啓蒙キャンペーンが始まりました。
入院中の死亡率が全体の7%で、重症例では20%に及び、癌よりも怖い病気です。
図:循環器入院のダントツ首位は、心不全
日本循環器学会J-ROAD研究より
心臓という臓器は、ご主人さまに迷惑をかけぬよう、最後までやりくりを続けます。徐々に傷んでいってもある点を超えるまでは何一ひとつ表立たず、でも、ついに支えきれなくなると症状が突然ゼロから100になるような感じです。
会社も人生もそうかもしれませんが、状態が悪くなればなるほど立て直しが難しく、治療によって得られる利益は少なくなります。悪化が進んでいるのに症状が乏しい「かくれ心不全」の段階で見つけ、先手を打つことが最も有効です。
図:すべての心臓病は、時間をかけて心不全へ至る
Dzau V, Am Heart J 1992.より
息切れやむくみが、心不全の代表的な症状です。ただし、初期の「かくれ心不全」という段階では、無症状の場合も少なくありません。
まずは、セルフチェックをしてみましょう!
初期は、坂道で息切れする程度です。病気が進むと寝入る頃に息苦しくなり、布団の上で起きあがると楽になることがあります。
通常、むくみは夕方にかけてひどくなり、朝起きると軽くなる特徴があります。しかし、心不全の人はむくみの変化はわずかで、日中のずっとむくんでいます。
心不全には、頸静脈怒張という特徴があります。
立ったり、座ったり、頸を上に据えている状態で、頚の皮膚に「拍動する揺れ」がありませんか?これが頸静脈怒張です。頸は露出していることが多いため、誰でも簡単に観察することができます。
図:頸の皮膚が揺れていたら、心不全かも
外来で診察の後、レントゲン、心電図、血液検査を行います。「かくれ心不全」の診断には、とくに血液検査でのBNP値と心エコー検査が大切です。
僅かな血液検査で、心不全の程度を知ることができます。一般的に100pg/mL未満だと、心不全ではありません。
日本心不全学会 BNP診療ステートメントより
心臓のポンプとしての働きと、心不全の原因を調べる検査です。検査は胸に超音波をあてて心臓の動きをみるだけで、全く痛みはありません。
心不全の治療は、ちょうどパズルを組み立てるように、様々な側面から治療を組み合わせる必要があります。専門医の間で必ずしも定着しておりせん。
当院の心不全診療は、都内でも類を見ない「包括診療体制」を進めています。治療は主に次の4つの方法を組み合わせて、心不全という難敵に立ち向かいます。
息切れやむくみをとり、だるさや動悸を軽くします。
速攻性はありませんが、長い目で見て心不全の悪化を防ぐ薬剤は、とくに「かくれ心不全」に有効です。
今や心臓病にとって、運動は「害」ではなく「クスリ」です。運動を安全に続ける心臓リハビリテーションは、「かくれ心不全」をはじめとして様々な心臓の病気の予防に有効です。
「心リハ」の様子
心臓カテーテル治療などによって、心不全の原因となる心臓病を根本的に治療します。心不全の原因が取り除かれて、改善の見込みのない「焦げ付き心不全」への進行を食い止めます。
誰でも歳をとれば、心不全との付き合いを避けて通ることはできません。
北里研究所病院では循環器専門医が、それぞれの患者様に合った治療をチームで提供します。