文字サイズ
拡大
標準
背景色

太ももの付け根(そけい部)、お臍、お腹の傷跡などが膨らむ病気、いわゆる脱腸です。ほとんど痛みはありませんが、自然治癒することはなく、悪化すると命に関わることもあります。

どんな症状があるの?

早期の(小さい)状態では、全く無症状です。
進行するとともに、立ち上がってお腹に力を入れた拍子に、お腹やふとももの付け根が、ぽっこりと膨らみます。大抵の場合は、痛みもなく手で押さえたり、横になると膨らみが元に戻ります。

膨らみが大きくなると、運動時に違和感を感じたり、腸が出入りすると、痛くなることがあります。

原因は?

原因は明確ではありませんが、大人の鼠径ヘルニアは、加齢とともに下腹部から足の付け根(鼠径部)の組織が弱くなり、足の部分からお腹の中にある腹膜が袋状に飛び出してくると考えられています。

ヘルニアなりやすい人

日常生活
  • 咳をよくする人
  • 妊娠している人
  • 過激な運動をする人
仕事柄
  • お腹に力がかかる仕事
  • 立ち仕事に従事
病気
  • 慢性便秘症
  • 肥満
  • 喘息
  • 慢性肺疾患

鼠径ヘルニアだけでも3つの種類があり、その他にも腹壁瘢痕ヘルニアもあります。

鼠径ヘルニア

外鼠径ヘルニア

鼠径靱帯の上で、外側から出てくるタイプ

内鼠径ヘルニア

鼠径靱帯の上で、内側から出てくるタイプ

大腿ヘルニア

鼠径靱帯の下からでてくるヘルニア。
出産を経験した女性に多いと言われています。

その他

お腹の手術の既往がある方は、傷の部分の筋膜が弱くなっている可能性があり、間隙をぬって腸が脱出します(腹壁瘢痕ヘルニア)。

どうやって検査するの?

1st ステップ

病変部に対する超音波検査を行い、本当にヘルニアかどうか、ぽっこり脱出している臓器は何か?の診断を行います。

2nd ステップ

さらに病気の広がりを調べるために、CT検査を行うこともあります。

どうやって治療するの?(1)

ヘルニアの治療は、弱くなった筋膜の部分を補強することが一般的です。

保存的治療 ヘルニアバンド

専用のバンドで、ぽっこりした部位を体表から押さえる方法で。治癒することはなく、対処療法です。

どうやって治療するの?(2)

ヘルニアの治療は、弱くなった筋膜の部分を補強することが一般的です。

手術治療

病変部切開法(前方アプローチ)

病変部の皮膚を小さく(3-5cm)切開して手術を行います。
従来までの方法で、ヘルニアの出口を糸で塞ぐか、ポリプロピレン製のメッシュをあてがって、穴を塞ぐ方法です。
50年に以上まえから使用されています。

手術は、実際にこんな感じにヘルニア門(ヘルニアの穴)を探し出してメッシュをあてがって塞ぐようにします。

どうやって治療するの?(3)

最近は、身体に優しい、術後疼痛が少なく、再発率が低いと言われる腹腔鏡での手術が断然!
術後のきずもほとんど目立ちません。
当院でも積極的に導入しています。

内視鏡手術

おへそを小さく(5ミリ)切開して、そこから内視鏡をお腹の中に挿入して行う手術です。

体に優しい腹腔鏡下ヘルニア手術

術後は

術後の痛みは、大体2-3日で改善します。
十分に痛み止めを使い、痛みを取り、回復に努めて下さい。
痛みが落ち着いたら、退院できます。
平均3日で日常生活に戻ることができるようです。

こんなメリットも!

腹腔鏡での手術は、1箇所の傷から左右両側の鼠径ヘルニアを治すこともできます。

回復が早い!

術後1-2週間すれば、軽い運動も可能になります。

北里研究所病院では、内視鏡手術のエキスパートを揃えた内視鏡手術センターを開設し、内視鏡手術を施行しています。
従来の前方アプローチとどちらの術式も数多く経験しており、患者さまの状態・ご希望・ヘルニアの大きさ・種類などを考慮して最良の方法を患者さまと相談して決めています。