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循環器疾患のなかで患者数が増加の一途をたどっている心不全。心臓のポンプ機能が悪化し体に血液を送れなくなる状態を指し、あらゆる心血管病の最終段階です。
循環器内科では「かくれ心不全」から「こげつき心不全」まで包括的な診察・診断を行っています。

心不全治療の礎となる体制づくり

心不全は「薬を飲めば治る」、「手術をすれば治る」というものでなく、何か一つに特化するだけでは最良の心不全治療を達成できません。 当院では、理想の診療を行うために、スタッフ一丸となり循環器診療の底上げに取り組んできました。

具体的には、いつでも循環器専門医が対応できる循環器オンコール体制を開始したこと、年間のカテーテル診療をこれまでの4倍以上のペースで行っていることなどです。 慢性心不全看護認定看護師を要とした他職種で構成された心不全チームもそれぞれの専門をいかし、互いをカバーし合えるいい関係性を築いています。

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また、都内でも診療を行っていることが少ない特定疾患である心臓サルコイドーシスや心臓アミロイドーシスの診療にも対応しています。 あらゆる循環器疾患に対応できるのが当科の強みなのです。

新たな試みとして2017年度より、循環器新患外来を開設しました。ただ振り分けを行う診察とは異なり、 初診の患者さまを包括的に診断し、治療への橋渡しを的確に行うことを目的とした"一歩踏み込んだ"初診外来です。

こげつき心不全の治療

心不全で心臓が悪くなりすぎてしまうと、オーソドックスな薬の治療などが通用しなくなってきます。 こういった重症心不全のことを「こげつき心不全」と名付けました。

わずかに残された心臓の能力で生きていくためのやりくりをするのが、こげつき心不全の治療です。 投薬による治療などの通常の方法だけでは太刀打ちできませんので、チーム一丸となって、これまでに培ったノウハウをいかし、患者さまの全身管理や教育を行っています。

その一環として、リハビリテーション部門と連携し、心臓リハビリテーション(心リハ)を積極的に取り入れています。 手足の筋肉をつけることは、心臓と血管の循環を安定させる非常に重要な要素で、心不全の方にとって筋肉の状態を整えることは今や大切な心臓病の治療です。

また、心臓から全身に栄養(血液)が送られないと、筋肉が落ちて、痩せ細ってしまい歩けなくなったりします。 心不全はこのような状態が非常に出やすく、これをカバーするためにも心リハは非常に重要です。 入院中に加えて、退院後も実生活に即した心リハが必要になりますから、外来受診での心リハにも積極的に参加してもらっています。

かくれ心不全の発見

心不全の多くは突然現れるわけではありません。 生活習慣病や喫煙といった心血管病のリスクから動脈硬化や心臓肥大が生じ、心筋梗塞などの心臓病が発症した後に、最終段階としての心不全へと進みます。

また、心不全は、心臓に異常があっても症状が出ない時期が非常に長く、表立っていないが心臓に異常がある状態は「かくれ心不全」と呼ばれています。 「かくれ心不全」の段階で治療を始めることで、圧倒的な治療効果が得られます。 心不全治療においては、症状が出る前にかくれ心不全を見つける、いわば「予防」や「先制医療(※1)」が非常に重要です。

※1 病気に対して先手先手に治療を進めること

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2017年度からは、地域の医療機関の先生方にかくれ心不全の患者を見逃さずに拾い上げていただくため、勉強会などを開催しています。 心不全を疑う第一歩は、症状としての「息切れ」や「むくみ」です。これに頸静脈(首の血管)が腫れ、拡張し揺れる「頸静脈怒張」の所見が現れたら、ほぼ心不全とみて間違いありません。

当科は心不全の患者さまが圧倒的に多く、スタッフ・設備・技術を包括的に活用し、適切に対応できるすべを持っています。 もちろん、心不全以外の循環器病への疑問や不安にも広く対応しています。 診断や治療に悩まれている方は、ぜひ一度相談してみてください。

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