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つくしんぼ(VOL.204)
2026年10月号

5型糖尿病と肥満とメタボリックドミノ
~その解決法としてのロカボ(緩やかな糖質制限)~

みなさん、5型糖尿病という言葉を聞いたことがありますか? 5型糖尿病は2025年に国際糖尿病連合が提唱した概念です。まだ、実臨床で使用されてはいませんが、これまでにない糖尿病の概念として世界的に注目されています。
そもそも、現在の糖尿病の分類は4つです。①1型糖尿病:自己免疫現象などにより、膵β細胞(インスリン分泌細胞)が破壊され、インスリンが欠乏する糖尿病、②2型糖尿病:体質や生活習慣を背景に、膵β細胞の能力を超えるインスリン分泌が必要となって生じる糖尿病、③薬剤や他の疾病や遺伝子の影響で生じる糖尿病:高血糖になった理由を一つに特定できる特殊な糖尿病、④妊娠糖尿病:妊娠中に生じる糖尿病の一歩手前くらいの血糖値異常、というのがその4つになります。日本人の糖尿病の90%以上を占めると考えられているのが2型糖尿病です。糖尿病の書籍を購入されたら、まず間違いなく2型糖尿病の情報が掲載されています。
2型糖尿病のイメージとして多くの方がお持ちなのが、『食べすぎ(カロリー過剰摂取)&運動不足(カロリー消費不足)→肥満→インスリン必要量の増大→血糖上昇→糖尿病』という経過です。20世紀の医学では、2型糖尿病とは自らの食欲を管理しきれず、食べすぎ(カロリー過剰摂取)をした人の成れの果てというイメージでした。しかし、2型糖尿病のイメージは変わりました。『糖質過剰摂取→食後高血糖→反動性の急激な血糖下降→飢餓感→食べすぎ→肥満→糖尿病』という肥満を介した糖尿病の他に、『糖質過剰摂取→食後高血糖→高血糖に伴う全身の代謝障害(糖毒性と言います)→空腹時高血糖→糖尿病』という肥満を介さない糖尿病も存在するのです。後者で反動性の急激な血糖下降が弱いのはインスリン分泌能力が乏しいからです。
実際、日本では2型糖尿病の6割近くが肥満を合併していません。糖尿病の方は食欲をコントロールできない訳ではなく、カロリー摂取量は適正なのに糖尿病になってしまうのです。こうした方たちが国際糖尿病連合の言う5型糖尿病の概念に合致しているとお考えください。
欧米では2型糖尿病の方のほぼ全員が肥満です。肥満と診断されてから糖尿病を発症しています。欧米人はインスリン分泌能力が高いので、太れるのです。日本人はインスリン分泌が弱く、太る能力が足りないので(それでも若い頃よりは小太りですが)肥満を介さず糖尿病になります。医師が目にする教科書(基本的に英語で書かれています)は肥満の後で糖尿病を発症すると今も記載されています。だから、痩せている2型糖尿病の人にすらカロリー制限食が指導されてきたのです。しかし、非肥満の糖尿病、すなわち5型糖尿病の背景にはカロリー摂取の不足があると国際糖尿病連合は言っています。太っていない2型糖尿病の方がカロリー制限をすることは病態を悪化させる可能性すらあるのです。
では、どうすればよいのか?その解決法が糖質制限です。糖質を控え、食後高血糖を是正できれば、血糖変動とその後の飢餓感を抑制して肥満も是正できますし(肥満合併2型糖尿病を予防できますし)、また、食後高血糖による代謝障害(糖毒性)も予防できるので、インスリン分泌の少ない方でも糖尿病を予防できます(肥満を合併しない2型糖尿病≒国際連合の言う5型糖尿病を予防できます)。
メタボリックドミノという概念があります。旧くは、カロリー摂取過剰と運動不足から肥満が起こり、それを基にして血糖・血圧・脂質が異常になって(これがメタボリックシンドローム)、その後に動脈硬化症や腎臓病や目の障害が生じる様子を示していました。21世紀初頭に伊藤裕先生(現・慶應義塾大学名誉教授)が提唱しました。ただ、このままでは5型糖尿病を説明できません。そこで、伊藤裕先生のご許可をいただいて私が修正・提唱したのがメタボリックドミノ(山田ヴァージョン)(図1)です。根っこにあるのは糖質過剰摂取と食後高血糖です。

食後高血糖は食後の血糖値が140mg⁄dl以上になる状況のことであり、その後の反動で血糖値が下がると、飢餓感を感じたり、眠気や集中力の低下を感じたりする人が出てきます(図2)。もし、昼下がりの大切な会議中に眠気をお感じの方がいらしたら、ことによると食後高血糖を生じているのかもしれません。そうした方はぜひ、緩やかに糖質を控えることをトライしてみてください。
その折、タンパク質や脂質の摂取を増やすことをお忘れなく。タンパク質や脂質の摂取は食後の血糖上昇を抑制します。脂質を食べると、高脂血症になる、肥満になる、動脈硬化症になる、というのは誤解です。脂質こそがもっとも健康的な栄養素だ、とデューク大学のウェストマン教授は言っています。どうぞ、安心して(ご自身の満腹感に身を委ねて)タンパク質と脂質でおなか一杯になってください。冬眠を準備させるための栄養素である糖質(その昔は穀類も果物も秋にしか食べられず、糖質を食べると動物は冬に備えて太ろうとするのだとコロラド大学のジョンソン教授は言っています)さえ控えていれば、満腹感こそが適切なカロリー量なのです。

私たちは一日というだけではなく、毎食の糖質量を考える食事法としてロカボ®という食べ方を提案しています(図3)。これは肥満合併2型糖尿病の方にも、肥満を合併していない2型糖尿病(≒5型糖尿病)の方にも適しています。ロカボの指導をお受けになった方では肥満の人は体重が落ち、痩せの人では体重が増え、そして両者とも血糖値が改善したことを私たちは報告しています。ご自身や周囲の方で糖尿病や肥満に悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひ、当院糖尿病センターにお越しください(初診外来を予約してください)。「美味しく楽しく食べて、健康に」というロカボをぜひお知りいただけますと幸いです。

ハッピーマンデーの一部診療実施について

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