北里研究所病院では、患者さまへのきめ細やかな対応、院内の意識向上のため、部署や診療科の垣根を越えたいくつかの部会があります。
今回はそのうちの一つ、「コンチネンス部会」をご紹介します。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、英語で失禁のことをインコンチネンス(Incontinence)といいます。インというのは英語の否定形の接頭語の一つで、「インポッシブル (不可能)oポッシブル(可能)」と同じというとわかりやすいでしょうか。ですからインコンチネンス(失禁)の反対がコンチネンス、つまり排泄が正常にできている状態(排尿・排便が維持されている)のことを表しています。ちなみに日本語で、失禁の反対は禁制といいますが、あまり馴染みがないために英語の「コンチネンス」を使用しています。
当院に入院されている方は高齢の方がとても多く、6~7割を占めています。ご高齢の方は短
期間の入院でも、手術後にベッドから動けない状態になることや、麻酔をかけてお小水のカテーテルをいれる処置をすることによって、排尿障害や排便障害を起こすことが多々あります。そのようなことがなくても、もともと便秘がちである方が、入院して環境が変わることによって便秘がひどくなったということもあります。
また、日常生活でもトイレが近い、ちょっとした時にお小水が漏れてしまう、いつもお腹がゆ
るくて心配だ、便秘ぎみなどそういった悩みを持っている方はいるのに、「恥ずかしくて言い出
しづらい」、「歳を取れば誰にでもあることだから仕方ない」となかなか表に出ることがないの
が現状です。実際には、こういった悩みを持っている方は性別年代を問わずかなり多いと感じています。
そういった方々をサポートするために院内で立ち上げたのがコンチネンス部会です。外部から
NPO法人 日本コンチネンス協会・会長の西村かおる先生にご協力いただき、医師、協会認定コンチネンスアドバイザー、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)が中心となって各部署のパイプ役となる看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士、事務と診療科の垣根を超えた多職種のメンバーが集まり部会を行っています。
部会は月に1回、それぞれの立場で患者さまから抽出した排泄に関する悩みを検討しています。ここで話し合われた内容や対策方法、治療方法はメンバーから各部署にフィードバックする仕組みになっています。
また週に一度、医師、看護師、理学療法士のチームで全病棟を回診しています。患者さまと一番接するのは病棟の看護師なので、そこで聞きだした悩みを取りまとめて、回診で相談、治療をしています。入院患者さまは、主となる病気の治療のために入院しているので、その中で起こってくる排泄の問題は後回しになってしまうことが多々あります。それをこちらでいち早く対応し、退院を見据えて排泄で困らないようサポートしています。
昨今、排尿の自立支援に注目が集まっています。適切なケアをすれば尿カテーテルがなくても自身で排尿ができるようになります。そうすることで患者さまの生活の質(QOL)が上がり、合併症の確率も低くなり、ひいては入院期間も短くなるなど、いろいろな良い面があります。当院では早い段階から保険診療として「排尿自立指導料」が算定できる医療機関として認定されました。これは2006年の部会発足より、患者さまの排泄の問題に取り組んできた結果だと思っています。
長く活動していることもあり、患者さまの悩みに応えられる体制はできています。これからは、今よりも高齢社会になり、いろいろな病気があってもQOLを維持しながら生きていきましょうという時代になります。そういった点でも排泄に関することはとても大事になってきます。命に関わることでもないし、なかなか相談をしづ らいかもしれませんが、悩むことはありません。身近な看護師でも大丈夫ですので、気軽にご相談ください。
コンチネンス部会の活動の一環として、週に一度看護師主導で「コンチネンス支援室」を外来の患者さまに向けて行っています。恥ずかしさや、周囲の理解を得られず、診察をためらう方が大勢いらっしゃいます。そのような悩みをお持ちの方のために、専門看護師スタッフ一同が症状の改善に取り組んでいます。
「外来にかかるにはちょっと」とためらわれている方は、まずは専門看護師に相談くださればと思います。専門看護師、コンチネンスアドバイザーがお話をお伺いします。勇気を出してご相談ください。
山下 英之(やました ひでゆき)
北里研究所病院 泌尿器科 副部長
1999年 北里大学医学部医学科 卒業、1999年 北里大学病院 泌尿器科学教室 入局、
2005年 アメリカ合衆国テキサス州ヒューストンベイラー医科大学泌尿器科学教室 留学、
2008年 北里大学病院泌尿器科 研究員。
2014年5月より北里研究所病院泌尿器科医学博士、日本泌尿器科学会(専門医、指導医)、日本排尿機能学会、日本泌尿器内視鏡学会(泌尿器腹腔鏡技術認定医)、日本内視鏡外科学会(技術認定医(泌尿器科領域))、
JBCT(がん治療認定医)
4月1日に赴任しました医師をご紹介いたします。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
インターネット上に溢れている妊娠や不妊についてのさまざまな情報。
情報が多くあるからこそ、正しい情報を見極めることは難しいものです。
そこで、体外受精(IVF)などの高度生殖医療を提供する「IVFチーム」が、妊娠・不妊についてのさまざまな疑問にお答えします。
妊娠や不妊の基礎知識から高度生殖医療まで連載でお届けします!
大まかな流れとしては、月経が始まってから2~3日目に受診し、血液検査や超音波検査を行います。検査結果に問題がなければ卵巣刺激※1を開始し、その後卵子の成長を確認するために2~3回診察をします。排卵日(生理13日前後)に採卵※2および
体外受精の処理を行います。受精した卵子は約5日間かけて成長し、順調に成長したものを移植あるいは凍結保存します。
このように、体外受精は卵子の成長を細かく確認する必要があるため、人工授精などと比べると周期中の通院頻度は高くなってしまいます。しかし、体外受精に踏み切れず治療が長期化してしまうと、結果として通算の通院回数が多くなったり、治療費が高くついてしまったりすることもあります。適切なタイミングで適切な治療方法を選択することが大切です。
※1 注射などの回数については卵巣刺激の方法によります。下の表を参考にしてください。
※2 採卵日は早朝に採卵を行い、採卵後の休憩を含めてお昼前まで時間がかかります。
卵胞の発育速度や薬の効き方は一人ひとり異なりますので、
薬・注射の量や実際の排卵日は前後する可能性があります。
当院は、妊活中の方や子どもができないとお悩みの方をサポートする体制を整えています。2017年7月より高度生殖医療のひとつ「体外受精(IVF)」を開始し、東京都特定不妊治療費助成事業指定医療機関として患者さま一人ひとりにあわせた治療を行っています。
また、無料の妊活学級も行っております。開催情報は8ページのイベントスケジュールをご確認ください。
この度、当院と国立がん研究センター中央病院は、病院と病院間の連携をさらに強化する目的で「診療連携協定」を締結しました。
この連携協定は、「がん」治療を専門とする病院と地域の基幹病院との連携を強化することで双方の機能を補完し合い、地域の患者様を総合的に診ることが可能となります。専門病院で最新の「がん」治療を受けていただき、「がん」治療後は当院にて入院または通院にて治療を行っていくことや当院で「がん」が発見された時には、最新の「がん」治療が受けられる専門病院をご紹介することなどの連携がさらに強化されます。
このような連携が強化された中で、さらに当院は、急性期ならびに回復期機能である地域包括ケア病棟を持つ医療機関として、双方の地域医療に役立つ医療を提供してまいります。
2019年2月23日(土)にIBD(炎症性腸疾患)市民公開講座、2019年3月16日(土)に整形外科市民公開講座が開催されました。
IBD市民公開講座は、港区との共催で「IBDに検査って必要なの?」をテーマに、血液や便で何がわかるのか、大腸内視鏡はやらなければいけないのか、他に代わりの検査はないのか、といった検査に関する内容や、最新の治療薬について当院医師および薬剤師が講演いたしました。
整形外科市民公開講座は、港区医師会整形外科医会と港区の共催で、「健康寿命を延ばすために 2019」をテーマに開催されました。関節疾患や脊椎疾患などの予防・治療について、整形外科医
による講演がありました。また、『ロコモーティブ症候群の運動療法』をテーマに、当院のメディカルトレーナーによるロコモ運動の提案があり、ご来場の皆さまにも実際に行っていただきました。
ご来場いただきました皆さま、誠にありがとうございました。
今後も継続して開催する予定ですので、皆さまのご参加をお待ちしております。
開催日 | 2019年11月11日(月) |
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時間 | 午後2時00分~午後3時30分 |
場所 | アネックス棟(東洋医学総合研究所棟)5階A・B会議室 |
定員 | 20名 |
内容 | ロコモーティブ症候群についての解説、簡単な運動のご紹介等 |
受講料 | 1,000円(税別・資料代を含む) |
申込方法 | TEL 03-5791-6345(予約センター) |
開催日 | 2019年7月6日(土) 2019年8月31日(土) 2019年10月5日(土) 2019年11月16日(土) 2020年2月15日(土) |
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時間 | 午前10時00分~午後0時00分 |
場所 | アネックス棟(東洋医学総合研究所棟) 5階A・B会議室 (8月31日のみ病院棟D会議室) |
定員 | 30名 |
内容 | リビングウィル作成について、延命治療についての講習 |
受講料 | 2,000円(税別・テキスト代を含む) |
申込方法 | TEL 03-5791-6345(予約センター) |
開催日 | 2019年6月26日(水) 2019年7月24日(水) 2019年8月28日(水) 2019年9月25日(水) |
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時間 | 午後2時00分~午後3時30分 |
場所 | アネックス棟(東洋医学総合研究所棟) 5階A・B会議室 |
定員 | 20名 |
内容 | 眼瞼下垂の診察、手術を希望される方への事前説明会 |
申込方法 | TEL 03-5791-6148(美容医学センター) |
開催日 | 2019年7月13日(土) 2019年9月7日(土) 2019年11月16日(土) 2020年1月11日(土) 2020年3月14日(土) |
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時間 | 午後1時30分~午後2時30分 |
場所 | 予防医学センターラウンジ(病院棟3階) |
内容 | 一般不妊治療(検査)から体外受精まで |
申込方法 | TEL 03-3444-6161(代表) ※「婦人科外来へ」とお伝えください。 |
2019年4月9日、財務省HPにおいて、新千円札(2024年度上期予定)のデザインに北里柴三郎博士の肖像が採用された旨の発表がありました。
これを受けて、法人・大学の両サイト(「新着情報」-「プレスリリース」)に、北里研究所理事長 小林弘祐と北里大学学長 伊藤智夫連名のコメントが掲載されました。また、北里柴三郎博士と野口英世(現千円札)の関係や、北里柴三郎博士が「近代日本医学の父」と言われる所以などのQ&Aも掲載されておりますので、あわせてご覧ください。