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薬の使い方で効き目に差がつく アトピー性皮膚炎治療

 当外来は、アトピーの症状が改善せずお悩みの方に向けた外来です。
アトピー性皮膚炎を専門にする医師が、良い状態が保てるよう診療を行っています。

 アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹を繰り返す病気です。アレルギーを起こしやすい、皮膚が乾燥し皮膚のバリア機能が落ちやすいといった体質の方にみられます。両親がアレルギー体質だと、子どもがアトピーになりやすい要素を引き継ぐこともあります。アトピーは子どもの病気と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は成人になって発症する方も多いです。当科でも場所柄もありますが、20~40代の成人の方が多く通院されています。
 アトピーの治療は、起きている皮膚炎をしっかり抑えることが一番重要であり、肌を乾燥させないための保湿剤と炎症を抑える塗り薬での治療が柱になります。また、かいて皮膚炎が悪化する悪循環を起こさないように、補助的にかゆみ止めの飲み薬を使うこともあります。他にも、例えばハウスダストやダニのアレルギーを持っている方が多いので、フローリングを中心にした生活や、こまめに掃除をするなど、生活環境の中でアトピーが悪化する要素を取り除くようにお伝えしています。
 当科のアトピー治療で特に力をいれているのが、薬の塗り方についてです。患者さまのなかには、処方した塗り薬を実際に必要な量より少ない量しか使っていない方が多いようです。そのため本来の効果が得られず、薬が効かないと思って使用をやめてしまうことが見受けられます。また、少し良くなると、治ったとご自分の判断で薬を塗ることをやめてしまう方も多いです。その段階では見た目では治ったようにみえても皮膚のなかで炎症がくすぶっているため、すぐにぶり返してしまいます。そのため、診察の際には薬の適量と塗る期間をご理解していただけるよう、特にしっかりお伝えするよう心がけています。多いと感じるかもしれませんが、大人の人差し指の第一関節から先にチューブの薬を出した量が、手のひら2つ分の面積の適量だといわれています。正しく使用することで効果が格段に違ってきます。
 また、一からしっかり治療を考える方向けに、アトピー教育入院を行っています。期間は1~2週間、マンツーマンの講義でアトピーに関する知識を深め、医師や看護師と一緒に正しい薬の塗り方やスキンケ アの方法を学びます。重症の方には免疫抑制剤や、昨年日本で使用が認められた生物学的製剤のデュピクセントでの治療も外来で行っています。
 アトピーは完全に治る病気ではないため状態の良い時と悪い時の波がありますが、正しく薬を使って波のふり幅を小さくして、できるだけ良い状態が続くようにしていくことが大切だと思っています。アトピーでお悩みの方はご相談ください。

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プロフィール

笠井 弘子(かさい ひろこ)

笠井 弘子(かさい ひろこ)
皮膚科 部長
2006年 慶應義塾大学医学部卒業、2008年 慶應義塾大学医学部皮膚科専修医。
その後、済生会横浜市南部病院皮膚科、
慶應義塾大学医学部皮膚科 助教、静岡市立清水病院皮膚科、
日本鋼管病院皮膚科主任医員、けいゆう病院皮膚科医長を経て、
2018年1月より北里大学北里研究所病院 皮膚科医長、2019年5月より皮膚科部長。
日本皮膚科学会(専門医)、日本美容皮膚科学会