皮膚や排泄のトラブルに関する知識と看護スキルをもつのが皮膚・排泄ケア認定看護師です。
患者さまのお困りごとをサポートしていきます。
三浦実和: 皮膚・排泄ケア認定看護師とは、床ずれ(褥瘡)やきず(創傷)、ストーマ(人工肛門、人工膀胱)、排泄に関する知識とスキルをもつ看護師です。当院では、私と川村さんの二人おります。
私は病棟で人工肛門を作る患者さまへのアドバイスやサポートと、スタッフ指導を含めた管理業務などを担当しています。
川村美紀子: 私は今年の4月に北里大学病院から褥瘡管理者として赴任しました。褥瘡管理者は組織横断的に全部署に関わる褥瘡関連の仕事を行います。また、病棟だけではなく外来や手術室の患者さまのケアや看護師の指導も担います。三浦さんは褥瘡管理者の前任者ということで、院内のことを教えてもらう機会は多いですね。
三浦: 褥瘡管理者は担当者が変わっても情報をしっかりと引き継ぐことが重要です。当院は大学病院より規模が小さいので情報を共有しやすく、ケアに反映させやすいという利点があります。
川村: 入院時はすべての患者さまに、褥瘡や創傷のできやすさ(リスク)の評価を行って必要な方に看護計画を立案します。リスクのある方は各部署の褥瘡対策委員会メンバーに選出された看護師が中心となって診ていきますが、さらにリスクの高い方(ハイリスク)は私が中心となって計画を立案し、指導も行います。
ご高齢の方は、入院時すでに褥瘡や創傷ができている場合も多くあります。患者さまやご家族に説明の上、主治医と相談して軟膏や創傷被覆材で治療を行います。褥瘡や創傷の専門である皮膚科や形成外科の診断や治療が必要と判断されれば各科の医師に依頼します。退院までに治りきらない場合、施設やご家族、かかりつけ医などに必要な情報提供や指導を行います。
三浦: 褥瘡予防のため、ご自宅でできる簡単で有効なケアは保湿ですよね。
川村: 乾燥した皮膚(ドライスキン)はバリア機能が低下していてかゆみを伴うことも多く、掻くことで傷つきやすくなります。市販品でよいので保湿剤を塗り保湿することが重要です。ご家族が塗ってあげれば、皮膚の状態を確認できるきっかけになるので、褥瘡を早く発見できることもあります。発見が早ければ治る期間も早くなることが多いです。
あとは除圧ですね。できれば、ずっと同じ体勢にならないように体を左右にゴロンゴロンと位置を変えてあげると良いです。体勢を変えることが難しい場合は、圧迫されている部分に掌を差し込むだけでも体圧が分散され、褥瘡予防にもなります。
三浦: ストーマを造設する患者さまは、まず外来で医師から手術についての説明を受けます。入院後は看護師が患者さまのストーマに関する知識を確認しつつ、詳しい説明を行います。ストーマ造設手術は自分の腸や尿管の一部をお腹の外側に出して便や尿の新しい排泄管理ができるようにする手術です。手術から退院まで10日前後と短い入院期間の中で、患者さまはご自身で排泄物が漏れないようストーマを管理する方法を身につけていきます。装具を交換したり、排泄物を捨てる方法など、日常生活を送るうえで必要なことをお伝えし、退院後も安心して生活できるようサポートしています。
退院後も継続して相談のできる窓口として川村さんが担当しているストーマ外来がありますのでご案内しています。
川村: 担当医から外来で術前に、患者さまやご家族へのオリエンテーションを依頼されることもあります。また、ストーマ外来では、患者さまやご家族が退院されてから日常生活を送るなかで生じる疑問や困りごとなど幅広くご相談を受けています。
川村: 尿や便の失禁は手術によって起こる予測できるものから、加齢や疾患、投薬の影響などによって起きるものまでさまざまです。認知機能が低下しても日常の生活動作ができる方も多くいますので、できることを維持しながらできないことに対して必要なサポートを行うことが大切だと考えています。ただ、失禁は日常の生活に支障をきたす場合が多く、羞恥心も伴うためになかなか言い出せない方も多いかもしれません。私たちは、そのような方たちのお困りごとを見極め、その方に何が必要なのかを客観的に分析・評価しながら、多職種でかかわるコンチネンス部会で計画を立案し、チームでサポートをしています。
川村: 皮膚・排泄ケア認定看護師以外にも当院はさまざまな専門・認定看護師がおり、いろいろな部署に配属されています。専門・認定看護師同士でも情報交換や情報共有をしており、多職種との関わりも盛んなところが当院の良さだと思います。
三浦: 専門・認定看護師の役割を知っていただくことで、より患者さまのお役に立てると思います。当院のホームページには一覧もありますので、是非ご覧ください。
三浦 実和(みうら みわ)
皮膚・排泄ケア認定看護師
看護師資格取得後、北里研究所病院へ入職し消化器外科病棟で勤務。2010年に皮膚・排泄ケア認定看護師資格を取得。外科病棟勤務、褥瘡専従看護師、看護部教育担当としての役割を経て、現在消化器外科・内科・HCUの病棟責任者として管理業務を行っている。
川村 美紀子(かわむら みきこ)
皮膚・排泄ケア認定看護師
北里大学病院に入職後、泌尿器科病棟・消化器外科病棟で勤務。人工膀胱や人工肛門の手術を受ける患者さまと向き合う機会が多かったことや先輩の皮膚・排泄ケア認定看護師の影響もあり、2007年に皮膚・排泄ケア認定看護師を取得。その後、褥瘡管理者として組織横断的活動を開始する。また、患者さまやご家族の高齢化がすすんでいることから、老年看護学の大学院修士課程を2019年に修了。再び褥瘡管理者として配属され、2023年4月より北里研究所病院の褥瘡管理者として異動となる。