循環器内科の診療は、急性期医療と2次予防医療の全く異なった側面を有する。急性期医療は、1)不整脈治療を含む救命処置、2)血圧調節と輸液管理を含む生命維持、3)患者の適切な病態把握と非薬物治療の選択に代表され、2次予防医療は、1)様々な疫学データにもとづいた予防治療、2)病態に応じた危険回避治療、3)正確な病態把握にもとづいた外科治療、カテーテル治療の選択に代表される。これらは、内科医の基本的な臨床能力を滋養する上できわめて重要である。
当院循環器内科は、過度なインターベンション治療にのみ走る事なく、常に患者本意の医療をはかり、Evidence Based Medicineにのっとり診断及び治療を行っていくことを旨としている。症例は急性心筋梗塞や狭心症のような虚血性心疾患ばかりでなく、弁膜症、先天性心疾患、拡張型心筋症、感染性心内膜炎など多彩な症例を経験可能である。これは、当院では、問診、聴診、心電図、心エコー図検査などをフルに活用することにより、適切な診断を行い、患者にとっての最良の医療を提供するように心がけているからである。
循環器内科部長
循環器内科医員
研修プログラムは、3カ月と短期間のため、集中して循環器に関する内容を研修することとなる。
病棟研修:
病棟担当医として患者を担当する。2カ月目より病棟主治医として患者を担当する例を数例経験する。
検査:
(1カ月目) 検査も非侵襲的なものを中心に行う。
(2カ月目) 検査も心臓カテーテル検査に入り、手技を学ぶ
(3カ月目) カテーテル治療にも参加、スワンガンツカテーテル挿入の技術も学ぶ。
診療は基本的に病棟における入院患者の管理が中心である。入院患者は、心臓カテーテル検査予定患者、循環器内科の緊急患者で研修にふさわしい症例、心房細動で電気的除細動予定患者、心臓外科術後リハビリ患者などである。またICUにおける循環器内科患者も担当する。
基本的な非侵襲的検査手技としては、心電図、トレッドミル運動負荷試験、ホルター心電図、心エコー検査、経食道心エコー検査、血管エコー、心臓核医学検査などの諸検査施行に参加し、循環器専門医として身につけるべき診断能力を向上させる。
侵襲的検査としては、毎週の心臓カテーテル検査に参加、冠動脈造影検査を施行する技術を習得するとともにその結果を判断する能力を養う。また3カ月目にはスワンガンツカテーテルによる血行動態モニターを学ぶ。また緊急の一時的ペースメーカー挿入による治療にも参加する。
人工ペースメーカ植え込み手術は慶應義塾大学病院心臓外科医師のもと、助手として参加する。
曜日 | 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 |
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午前 | 病棟 | 心エコー検査 | 心エコー検査 | 病棟 | 心筋シンチグラム | 経食道心 エコー検査 |
午後 | トレッドミル検査 | 心臓カテーテル検査 | 病棟 | 血管エコー | 呼気ガス分析 | |
夕方 | 心エコーカンファレンス | 部長回診 心カテカン ファレンス |
病棟担当医として担当した患者に対しては、病棟主治医と連絡をとり治療を行う。
病棟主治医として担当した患者に対しては、外来主治医と連絡をとり治療を行う。
心電図診断、ホルター心電図解析
2カ月に1回のペースメーカー外来(第1金曜午後)
1カ月に1回の心臓外科四津教授外来(第3土曜午前)
部長の回診時に病棟患者すべてのチェックを行い、診察法、聴診技術を会得する。
(B)研修2年目(指導医と連携を保ちつつ、独立して研修を行う)
(A)非侵襲的検査
(B)侵襲的検査と治療手技
(C)救急蘇生研修
(A)心エコーカンファレンス 毎週月曜17:30より
心エコー検査の基礎的な内容から問題症例の検討、翌日心臓カテーテル検査予定の患者のエコー所見を中心に討議。
(B)病棟カンファレンス 毎週火曜17:00より
心臓カテーテル検査施行患者の方針を決める場である。看護師も含めて総括的に討論する。
(C)CPC 偶数月の第1水曜17:30より
病院全体の症例検討会
月1回 New England Journal of Medicine、Circulationなどの最新の文献を読む。
ミニレクチャー2週間に1回 20分くらい。心カテカンファレンス後に行う。
専修医にテーマを与え、より循環器に対しての知識を深めるために文献を調べ、発表する機会を与える。
(A)ICU、HCU
当院ICUは救急部の管轄であり、ベッド数4床で内2床は外科の手術後の患者対応のため残りの2床が内科管理となるが、救急度の高い循環器疾患は利用率が高い。モニターシステムは完備され、観血的モニター(スワンガンツカテーテル、動脈ライン)及び呼吸管理、IABP使用、透析による除水までほとんどの集中的治療が可能である。
一方、HCUはベッド数7床で内3床は外科使用のため残り4床を内科ベッドとして利用する。ICU同様モニター管理、呼吸管理に関して集中的治療が可能であるが、重症度の高い患者において長期加療が必要な症例が中心となる。
ICU当直として月2~3回あたるが、その分の休日期間は配慮される。
*主な対象疾患:
急性心不全、慢性心不全の急性増悪、急性心筋梗塞、不安定狭心症、ショック、心タンポナーデ、肺塞栓症、心室性不整脈、急性大動脈解離
*習得すべき診断、検査:
血行動態モニター(スワンガンツカテーテル、動脈ライン)、心電図診断、緊急時の心エコー技術、心臓カテーテル検査の適応、合併症とその手技、心臓核医学検査の適応と読影
*治療:
薬物治療の適応と実際の使用法(カテコラミンなどの強心剤、利尿剤、血管拡張剤、抗凝固療法、血栓溶解療法、抗不整脈薬の使用法など)、電気的除細動の適応と手技、一時的ペースメーカーの適応と手技、心肺蘇生の適応と手技(BLS、ACLS)、呼吸管理(人工呼吸器の適応と実施)、IABPの適応と手技、PCIの適応と手技、CABGの適応、人工透析の適応
(B)5階病棟一般床
循環器の一般患者が入院対象となり、25床が定床である。心カテ目的の患者、慶應義塾大学病院で心臓外科手術を行った後のリハビリ目的で転院した患者、直流除細動目的で入院の患者などの入院が多く、平均在院日数は短く多忙である。またCCUの後方ベッドとしても利用される。
専修医の1年目は指導医とともに、専修医2年目は主治医として患者管理にあたる。週に1回循環器内科部長の回診を行い、全患者の問題点を検討する。
*対象疾患:
急性心筋梗塞(亜急性期)、狭心症、弁膜症、心筋症、不整脈(心房細動など)、開心術後、心不全(軽症)
*習得すべき診断、検査:
心電図検査、心エコー検査、トレッドミル検査、ホルター心電図、24時間血圧計、カルデイオフォン、心臓核医学検査(負荷心筋シンチ、BMIPP+Tlシンチ、MIBGシンチ)、心臓カテーテル検査(診断)
*治療法:
薬物療法(β遮断剤、亜硝酸剤、抗血小板剤、利尿剤、アセ阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬など)、心疾患患者のリハビリと生活指導、PCIの適応、人工ペースメーカーの適応、食事療法、運動療法
(C)検査部門
〈心臓カテーテル検査〉
心臓カテーテル検査は火曜午後に通常行っている。また急性心筋梗塞症例が来院時は原則として緊急で行う。
専修医が施行する場合は必ず指導医が立ち会い、穿刺、カテーテル操作、撮影法、合併症予防策、止血操作について学ぶ。専修医1年目では3カ月の短い研修期間のため、心臓カテーテル検査は原則独立しては行わないが、検査の助手として参加する。専修医2年目では術者として独立できるようにするのが目標である。
〈心エコー検査〉
経胸壁心エコー検査は、非侵襲的検査として重要な検査であり、心疾患を理解する上で必須の手技のため、専修医1年目からできる限り一人で独立できるように学ぶ。経食道心エコー検査は医師の指導の元に1年目では解剖学的な位置関係を理解し、2年目では実際の手技を含めて学ぶ。
〈血管エコー〉
動脈エコーは主に下肢の閉塞性動脈硬化症の診断に、また静脈エコーは下肢の深部静脈血栓症の診断に有用である。血流の評価、負荷テストの反応の評価などを理解する。
〈トレッドミル検査〉
検査の適応、判定、合併症とその対処などについて学ぶ。専修医1年目から独立してできるようにする。
〈心筋シンチ〉
冠動脈疾患のスクリーニング、viabilityの評価、心機能の評価などにおいて重要な検査である。金曜午前に医師の指導のもと、負荷心筋シンチが行われており、また他の日に施行された安静心筋シンチ(BMIPP+Tlシンチ、MIBGシンチ)の解釈も理解できるようにする。