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遠隔医療・病理診断(センター)について

「病理検査報告書」を「病理診断報告書」に!

病理診断体制の信頼性と導入メリット

現在、日本では慢性的な医師不足が深刻化しており、とりわけ病理診断業務を担う病理医の確保は、多くの医療機関にとって大きな課題となっています。全国の病理医はわずか3,000人弱。病理学会認定施設のうち20%以上が常勤病理医を配置できておらず、さらに約35%の施設では、1名の病理医がすべての病理診断業務を単独で担う「ひとり病理医」の体制を余儀なくされています。このような体制では、医療現場で重視されている**ダブルチェック(複数名による確認)**が困難であり、診断の正確性や安全性に影響を及ぼすリスクが高まります。1)つまり、他の診療科では当たり前に行われている確認体制が、病理診断においては確保できていないという現実が存在します。

病理診断業務を外部の「検査センター(衛生検査所)」に委託されている医療機関も多く見られますが、その場合、返送されるのは「病理診断報告書」ではなく多くがシングルチェックで作成される「病理検査報告書」となり、さらに正式な診断としての効力を持つには、臨床医による判断を経る必要があります。これは、診断の信頼性や一貫性において課題が残る運用です。
病理診断科では、こうした課題を解決すべく、高精度かつ信頼性の高い病理診断支援体制を整備しています。病理診断依頼書(※様式44)とともに、組織標本の送付あるいはデジタル病理画像の受領を通じて、病理専門医が直接診断を行い、さらに複数名によるダブルチェック・レビュー体制により診断の質を向上します。作成された「病理診断報告書」はデジタル形式で迅速に提供され、学術的にも推奨される標準ワークフローに準拠した高精度な病理診断をご利用いただけます。

病理診断科の「病理診断報告書」は、単独診断や外部委託型の報告書とは一線を画す高度な専門性と信頼性を備えており、貴院における安全・高品質な医療の提供を強力にサポートいたします。

※保険医療機関間の連携による病理診断に係る情報提供様式44
PDFファイル Excelファイル

情報セキュリティへの配慮

本事業では、貴院からお預かりする患者情報を安全かつ適切に取り扱うため、医療情報セキュリティの国家基準である「3省2ガイドライン」(厚生労働省、経済産業省、総務省の各ガイドライン)に準拠した通信回線と情報管理体制を導入しています。
これにより、患者情報を含むすべての医療データに対して、情報漏洩・改ざん・不正アクセスなどのリスクを防御しています。医療機関の皆さまに、安心してご活用いただける万全のセキュリティ環境をご提供しています。

1)参考文献
  1. 前田一郎,星野昭芳,他.病理診断におけるダブルチェックの有用性.診断病理(1345-6431)42巻1号 Page50-57(2025.01)
病理診断におけるダブルチェックの有用性

病理診断科と連携するメリット

  • 大学病院との連携による高い専門性の確保
    高度な専門知識と豊富な経験を有する大学病院の病理医と連携し、診断の質と信頼性を向上させます。
  • 正式な「病理診断報告書」の発行が可能に
    当院と連携することで、自施設が「病理診断を行う医療機関」としての機能を備え、正式な病理診断報告書を発行することが可能になります。
  • 病理専門医によるダブルチェック体制の導入
    診断結果は複数の病理専門医による確認を経て提供されるため、精度の高い診断体制を自院の医療サービスに組み込むことができます。
病理医と病理診断

遠隔医療・病理診断を行うために、ご対応いただく事項

  1. 特掲診療科の施設基準届出の提出
    関東甲信越厚生局に対し、「特掲診療科(病理診断科)」の施設基準に関する届出(様式79の2)をご提出いただきます。
    ※様式79の2(PDFファイル
    Wordファイル
  2. 標本作製依頼の手続き
    提携する衛生検査所に対し、標本作製の依頼を行っていただきます。あわせて、所定の依頼書(様式44)のご記入・提出が必要です。
    ※保険医療機関間の連携による病理診断に係る情報提供様式44
    PDFファイル
    Excelファイル
  3. 標本の送付
    作製された標本は、専属の搬送業者を通じて当院までお送りいただきます。

算定する診療報酬点数の違いについて

検査センターに病理診断を委託されている場合は、「病理標本作成料(860点)」と「判断料(130点)」の合計990点が算定できます。
一方、当院と連携して遠隔医療・病理診断を実施いただいた場合は、「病理標本作成料:860点」と「病理診断料:520点」と「病理診断管理加算2:320点」の、合計1,700点の算定となります。
(※当院との契約に基づく按分となります。)
さらに、施設基準の届け出を行っていただくことで、特定の手術後に悪性腫瘍と病理診断された場合には、『悪性腫瘍病理組織標本加算(150点)』も追加で算定することができます。

特色・方針

病理診断科の業務は、肉眼と顕微鏡を用いて、患者さまの体から得られた臓器・組織・細胞の病理診断を付けることであり、 病理医と臨床検査技師が協力して行っています。その内容は次のように分けられます。

  1. 病理組織診断(組織診)
    A)生検材料
    B)手術材料
  2. 術中迅速診断
  3. 細胞診
  4. 剖検(病理解剖)

モットーは迅速、正確、丁寧です。将来的には、生検例の当日診断をめざしています。その他、臨床病理カンファレンス(Clinicopathological conference:CPC)などのカンファレンスを行い、医師の卒後教育や内部医療監査の役割も負っています。

医師紹介

氏名 役職・専門・出身 資格等
前田 一郎(まえだ いちろう)
<役職>
病理診断科部長
<専門>
外科病理・乳腺病理
<出身>
聖マリアンナ医科大学医学部卒業
聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
日本病理学会認定病理専門医
日本臨床細胞学会細胞診専門医

北里大学医学部教授
日本病理学会評議員
日本臨床細胞学会理事
日本デジタルパソロジー研究会理事長(会長)
星野 昭芳(ほしの あきよし)
<役職>
医長

<専門>
外科病理 乳腺病理
<出身>
名古屋大学医学部卒業
東京医科歯科大学大学院医科学総合研究科 博士課程修了
病理専門医
薬剤師免許

第1種放射線取扱主任者
中学校・高等学校教諭1種(理科・数学)
北里大学医学部病理学講師
船津 美恵子(ふなつ みえこ)
<役職>
非常勤