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対象疾患

乳がん(浸潤性乳管がん、浸潤性小葉がん、非浸潤性乳管がん、非浸潤性小葉がん、パジェット病など)、甲状腺疾患

乳がんの特徴

ほとんどの乳がんは、乳管(乳汁の通り道)の壁の細胞が何らかの原因によって無限に増殖するようになって発生します。

乳がんは、がん細胞が乳腺の組織の中に発生した疾患であり、最も一般的なタイプは、乳管の細胞から発生する乳管がんで、比較的まれなタイプとして小葉から発生する小葉がんがあります。

このほかのまれなタイプとして、発生母地の不明な炎症性乳がんがあります。

乳がんはまず乳房の中で徐々に増大し、早期のうちは乳腺内にとどまります(非浸潤がん)が、がん細胞にさらに異常が加わると、乳管の壁を破って間質へ進展していくものと考えられています(浸潤がん)。

進行の過程でリンパ節や他の臓器(肺、肝臓、骨、脳など)に転移を起こすことがあります。この転移(特に臓器の転移)が生命を脅かすことになります。転移の起こりやすさや、どこの臓器に転移するかは、個々のがんにより異なります。

リンパ節では最初に腋窩リンパ節に転移することが一般的です(乳がん転移のイメージ/上図)。転移性乳がんと呼ばれるこの病態は、乳がんが原発巣である乳房を離れて、身体の他の部位に進展していることを意味します。また、転移巣は転移先の臓器にかかわらず原発の乳がんと同じ性質を保持しています。一般的に乳がんは他の臓器のがんと比較して悪性度が低いとされています(悪性度が高いものもまれには存在します)。

その理由として、(1)発育進行が他のがんに比べ緩やかである、(2)適切な治療により根治の可能性が高い、(3)進行している場合や再発をきたし根治が困難であっても、抗がん剤やホルモン剤など有効な治療手段が数多くあることなどがあげられます。その結果5年生存率、10年生存率は他のがんと比べて良好です。

日本における乳がんの頻度は増加の一途をたどっており、2012年に新たに乳がんと診断されたのは推計73,997例、罹患率は1位となっています。また、女性のがんによる死亡の5位にあります(2014年の調査)。食生活などの生活の欧米化、晩婚にともなう初産年齢の上昇などが関連していると考えられています。

女性の乳がんの発生には様々な危険因子(リンク)が知られており、そのような因子をもつ女性は、一般女性より頻繁に乳がん検診を受けるなどの注意が必要です。

乳がんの危険因子

  1. 乳がんの既往歴がある
  2. 母親または姉妹に乳がんの既往歴がある
  3. 妊娠した経験がない
  4. 初産年齢が30歳以上であった
  5. 初潮が早かった、あるいは閉経が遅かった
  6. 肥満である
  7. 青年期に、何度も放射線被曝を受けた
  8. 脂肪分の過剰摂取
  9. アルコールの摂取
  10. 女性ホルモン補充療法

おもな症状

早期乳がんは、ほとんどの場合痛みをともないません。このほかの症状もないのが一般的です。しかし、がんの進展に従い、次のような症状が現れます。

  • 乳房や腋窩の腫瘤や厚み
  • 乳房の大きさや形の変化
  • 乳頭からの分泌物
  • 乳房・乳輪・乳頭の皮膚の色や形の変化(へこみ、ひきつれ、赤み、皮膚のかさつき)

診療内容

診療方針
  1. 高機能な医療機器を用いて精度の高い診断、治療を行います。
  2. 患者さまの不安を軽減すべく、迅速な診断を心がけています。
  3. 最新の知識にもとづいた医療を提供します。
  4. 一人ひとりの病状やライフスタイルに合わせた個別化医療を提供します。
  5. 根治性と整容性(傷が目立たないこと)を重視した手術を行います。
  6. 病気や日常生活の不安を軽減できるように配慮したトータルケアを実践します。

マンモグラフィ、乳房超音波検査をはじめとして、ステレオガイド下マンモトーム生検、MRIを最新の設備で行っています。
乳がんの治療には、①手術、②薬物療法、③放射線治療があり、患者さま一人ひとりの病状やご要望をふまえ、日本乳癌学会等の治療ガイドラインにもとづいてこれらの治療を組み合わせて行います。

手術では可能な限り乳房や腋窩リンパ節を温存できるように工夫し、エビデンス(科学的根拠)にもとづいた質の高い「がんの根治性と乳房の整容性を重視した治療」を心がけています。おもな術式は、乳房温存術、乳房切除術、乳頭乳輪温存乳房切除術、皮膚温存乳房切除術、組織拡張期(ティッシュ・エキスパンダー)挿入、センチネルリンパ節生検、腋窩リンパ節郭清、腫瘤摘出術、局所切除術などであり、乳がん学会等の治療ガイドラインと患者さまの要望を踏まえ、術式を選択しています。
乳房温存術とセンチネルリンパ節生検の組み合わせが最も多く、形成外科とともに乳房同時再建術も行っています。また、乳房温存術後に必要な放射線治療の設備も完備しています。
2015年のおもな乳がん手術の内訳は、乳房温存術75件、乳房切除術22件、局所切除術4件です。乳房切除術のうち、乳頭乳輪温存乳房切除術を9件、乳房再建術(ティッシュ・エキスパンダー挿入)を7件で行っています。

薬物療法では、最新の知見にもとづいた化学療法(抗がん剤)、内分泌療法(ホルモン療法)、分子標的療法を単独または併用して治療を行います。当院はがん専門看護師と専任薬剤師が勤務する外来化学療法室を完備しており、化学療法は原則外来通院で行っております。
放射線治療では、乳房温存術後の温存乳房照射のほか、転移・再発臓器(脳、骨など)に対する照射があります。
乳がんの診断・治療の詳細については、こちらをご覧ください。

常勤病理診断医による術中迅速病理検査、放射線治療医による術後放射線治療、理学療法士によるリハビリテーション、精神科医と連携したメンタルケアなども行っております。術後放射線照射は通常5週間(25回)程度の通院治療が必要ですが、当院では4週間程度の短期照射(16~20回程度)が可能です。
乳腺に対する放射線治療に関しては、診療時間外でも実施しており、仕事帰りなどに治療を行うことも可能です。ご希望の方は主治医にご相談ください。
また、近年の若年性乳がんの増加をふまえ、産婦人科医との連携により妊孕性(にんようせい:妊娠の可能性)に関するご相談にも対応しています。

実施している検査

マンモグラフィ、乳腺超音波(エコー)、乳房造影MRI、穿刺吸引細胞診、超音波ガイド下針生検、マンモトーム生検(超音波ガイド下、ステレオガイド下)、腫瘤摘出生検、その他(胸腹骨盤部CT、骨シンチグラフィ等)

実績

治療(2015年)

乳がん手術件数:101件
放射線照射:85件
化学療法:860件

医師紹介

日本乳癌学会前理事長や乳腺専門医を中心に、必要に応じて精神科や形成・美容外科の医師とも連携して診療にあたっています。女性医師もおりますので、ご希望があればご指名ください。

氏名 役職・専門・出身 資格等
五月女 恵一(そうとめ けいいち)
<役職>
乳腺外科副部長

<専門>
乳癌(乳腺疾患)、甲状腺癌(甲状腺疾患)
<出身>
名古屋大学医学部卒業(1986年卒業)
日本外科学会専門医・認定医
日本乳癌学会指導医・専門医・認定医
日本内分泌外科学会指導医・専門医
日本オンコプラスティックサージャリ―学会 責任医師
検診マンモグラフィー読影認定医
乳がん検定超音波検査実施・判定医
日本がん治療認定医機構認定医

日本乳癌学会 評議員
日本乳癌学会 診療ガイドライン評価委員
前田 日菜子(まえだ ひなこ)
<役職>
乳腺・甲状腺外科医長

<専門>
乳腺・消化器
<出身>
杏林大学医学部(2011年卒業)
日本乳癌学会認定医
日本外科学会専門医
マンモグラフィー読影認定医
乳がん検定超音波検査実施・判定医
日本オンコプラスティックサージャリ―学会 実施医師
池田 正(いけだ ただし)
<役職>
非常勤

<専門>
乳腺外科
<出身>
慶應義塾大学医学部(1974年卒業)
日本乳癌学会専門医・認定医
日本外科学会指導医・専門医・認定医
日本癌治療学会臨床腫瘍専門医
日本がん治療認定医機構暫定教育医
マンモグラフィー読影認定医

医学博士
元日本外科学会、日本癌治療学会理事
日本オンコプラスティックサージャリー学会責任医師
日本乳癌学会名誉理事長
日本オンコプラスティックサージャリー学会名誉会員
日本外科学会特別会員
日本内分泌外科学会特別会員
元帝京大学医学部外科学講座主任教授
元日本癌治療学会理事
柳澤 貴子(やなぎさわ たかこ)
<役職>
非常勤

<専門>
乳腺
日本乳癌学会認定医
日本外科学会専門医
マンモグラフィー読影認定医
乳がん検定超音波検査実施・判定医
医学博士

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