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2021年4月、心臓リハビリテーションセンターを開設しました。
多職種が協同して心臓病の患者さまに関わり、包括的な心不全管理を行っています。
心臓リハビリテーションが心臓病の再発予防に効果的であることは、科学的に証明されています。

心臓リハビリテーションセンターで心臓病の再発予防を

心臓病の一次予防と二次予防

 日本人の死因の第2位は心疾患で、心疾患のうち多くを占めるのが心不全です。心不全は心臓が悪いことにより身体機能が低下する、命に関わる病気です。急性心不全を発症すると入院加療後も多くは慢性心不全の状態になります。さらに再発による入退院を繰り返していくことで、薬剤への抵抗性が増して治療が難しい難治性心不全へと悪化していきます。
 一度心不全を発症すると身体機能は元の状態に戻りません。発症しないことが一番大切ですが、再発させないこともとても重要です。
 心不全などの心臓病にならないための予防を一次予防、心臓病を一度起こした方の再発を防ぐための予防を二次予防と言います。当科では通常の循環器外来の他、一次予防や症状の安定している 二次予防の患者さま向けの循環器予防外来、二次予防の中でも心不全に特化した心不全外来、さらに二次予防を多職種で包括的に管理する心臓リハビリテーションセンターを開設して診療を行っています。

再発予防に有効な心臓リハビリテーション

 心不全や狭心症、心筋梗塞などの心臓病を発症した方が予後改善や再発予防のために活用していただけるのが、心臓リハビリテーションセンターです。医師や看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士など心臓のプロフェッショナルである多職種が治療に関わります。
 センターでは、心肺運動負荷試験(CPX)を用いて一人ひとりにあわせた運動処方を行います。運動前には医師の診察があり、運動中は理学療法士が患者さまの体調や病状にあわせて安全第一で対応します。食事栄養指導・健康相談・生活指導・服薬指導なども包括的に行っていきます。診察室で医師に質問しにくいことも、リハビリテーション中であれば気軽に口にできることもあるでしょう。服薬や食事制限を徹底できない方が、リハビリテーションでさまざまなスタッフから励ましやアドバイスを受けることで、守れるよう になることもあります。心臓の状態が悪化した場合も、即入院が必要な状態になる前にスタッフが気づき、早め早めに対処することができます。
 心臓リハビリテーションセンターの通院頻度は、利用される方のライフスタイルにあわせて調整が可能です。週に1〜2回という方もいれば、外来診療にあわせて数カ月に1回という方もいらっしゃいます。心不全など対象疾患であれば保険が適用できます。当院以外の病院で手術や治療を受けられた方でもご利用いただけます。
 心臓リハビリテーションが心臓病の予後改善や再発予防に効果があることは科学的にも証明されています。心臓病の再発を繰り返すことは命に関わりますので、入退院を繰り返されているような方に特に利用をおすすめしています。

逆紹介後も年1回の循環器予防外来

 心臓リハビリテーションセンターは二次予防の患者さまのための施設ですが、当科では一次予防や症状の落ち着いた二次予防の患者さまのために、かかりつけ医や地域の診療所との病診連携も取り入れた包括的な心不全管理のシステムも構築しています。
 外来を受診する高血圧や脂質異常症など生活習慣病の一次予防の患者さまや、循環器疾患でカテーテル治療などを受けてから時間が経って病状が安定した二次予防の患者さまには、当科からかかりつけ医や地域の診療所などへ逆紹介をすることになります。
 かかりつけ医では十分な検査を受けられないのではないか、何かあった時に対応してもらえないのではないかと、逆紹介を不安に思われる方がたくさんいらっしゃいます。しかしながら、当科には逆紹介後も年1回、循環器予防外来に来ていただき、かかりつけ医や地域の診療所ではできないような細かい検査を受けるシステムがあるので、安心して治療を継続していただけます。

再発予防のために継続治療を

 心臓病は、一度発症すると再発の危険性が高く、再発を繰り返すことで治療抵抗性を増していく病気です。再発予防には、服薬だけではなく運動や食事などの生活習慣の改善が非常に重要です。しかし、心臓にリスクのある方にとって運動は不安を伴うものですし、長く続けてきた生活習慣を変えて退院後も一人で継続することはやはり困難です。
 心臓リハビリテーションセンターでは、運動指導はもちろん、生活に関する相談・指導なども多職種のスタッフが関わり、包括的に行っています。センターの利用は心臓病の予後改善や再発予防に非常に効果的ですし、利用を継続されることで再入院の割合も低くなります。
 是非ご活用いただければと思います。

プロフィール

東條 大輝(とうじょう たいき)

東條 大輝(とうじょう たいき)
1995年山形大学医学部卒業。1999年山形大学医学部医学研究科卒業。山形大学医学部第一内科医員、山形県立中央病院内科勤務を経て、2000年4月より北里大学医学部循環器内科教室へ。2003年4月より2005年3月まで米国エモリー大学心臓病学教室へ留学し、酸化ストレスと血管病について研究。2005年4月より北里大学復職し、2010年4月から心臓カテーテル部門主任として虚血性心疾患のカテーテル治療・研究に従事。2019年1月大和市立病院循環器内科部長、2020年4月相模原協同病院総合診療センター長を経て、2021年4月北里大学北里研究所病院循環器内科部長として着任。
医学博士、総合内科専門医、循環器内科専門医