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最新の手術支援機器O-arm(オーアーム)の導入により、脊椎手術の安全性がさらに高まります。首・背中・腰の痛み・手足のしびれなどの不調を我慢せず、積極的に診断・治療を受けてください。

まずは専門医による診断を

脊椎疾患の症状には、首や背中や腰が痛い、肩こりがひどい、手足の痛みやしびれなどがあります。整形外科で扱う疾患は、加齢性変化によって起きるものが多くあります。たとえば、膝や股関節などの変形性関節症の最大の原因は、加齢による経年劣化です。人間が年をとるように、関節も背骨も年をとります。長生きされる方が増えるほど、加齢性変化による疾患も増えていきます。年だから不調があるのは仕方がないと諦めてしまう高齢者の方も多いのですが、足腰が弱ったり、痛みがあって動くことができないと、QOL(※生活・生命の質)が大幅に下がってしまいます。
医学の進歩によって治せる病気は増えており、脊椎の専門医が診れば、より適切な治療法が見つかるかもしれません。現在は、80代、90代といったご高齢の方でも手術を受けることができますし、手術以外の治療法も進歩しています。年だからといって仕方がないと諦めてしまう時代ではありません。
当センターには豊富な知識と高度な技術をもった脊椎の専門医「脊椎脊髄外科指導医」が2名おり(2022年12月現在)、最先端の医療を提供しています。首・肩・腰に痛みがある、手足がしびれるなどの症状で困っている方は、まずは当センターを受診してください。

一人ひとりにあった治療法

原因疾患が診断されたら、まず行うのが保存的治療です。保存的治療とは、服薬・湿布・塗り薬などの薬物療法、リハビリなどの運動療法、神経ブロックなどの注射療法のことです。保存的治療を行っても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、手術をご提案します。
脊椎センターでは、その人が何に困っているのか、病歴や社会背景、家族背景なども考慮して治療方法を決めていきます。
たとえば、骨粗しょう症の高齢者の方に多い脊椎の圧迫骨折の場合を例にとりましょう。圧迫骨折の場合、つぶれた骨が自然に固まれば痛みはとれますが、つぶれた骨が元の形には戻ることはなく、後弯というのですが背中が前かがみに曲がってしまいます。20代〜40代の方が事故などにより脊椎の圧迫骨折を受傷された場合は、そのような後遺症が残らないように積極的に手術をお勧めします。しかし、80代〜90代になると、他の病気を患っていたり、体力が低下していたりする方もいるので、専門医が総合的に考えて治療方法を提案したうえで、患者さまに選択していただくことになります。
同じ骨折という疾患であっても患者さまによって適切な治療方法は異なります。治療内容を十分にご理解いただき、安心して治療を受けていただくために、専門医による問診や「インフォームドコンセント(※説明と合意)」が重要なのです。

最新手術支援機器の導入で
より安全な手術の提供を

当センターは脊椎脊髄専門施設であり、保存的治療から手術まで脊椎疾患に関する治療全般を行っています。特に手術治療では、傷が小さく出血の少ない身体的・精神的負担が小さい低侵襲な手術を心がけています。2022年5月には、脊椎手術の安全性をより高めるために、最新の手術支援機器O-arm(オーアーム)を導入しました。
脊椎手術では、脊椎に金属製のネジを入れて固定することがあります。脊椎の形や大きさには個人差があり、その周りに神経や血管があるため、手術でネジを入れる際に、それらの組織を傷めるリスクがあります。
手術を受けられる患者さまの脊椎の骨の大きさ、形、並び方には個人差があり、人それぞれで違います。O-armは、手術の途中で患者さまの脊椎の画像を撮影し、その骨の情報をコンピューターが解析して、スクリューなどの金属を設置したりする場合の正しい方向を教えてくれます。いわば、運転中に車のナビが、目的地までの正しい道を教えてくれるようなものです。
O-arm導入前は、手術前に撮影したレントゲンやCT画像で予めネジを入れる位置を確認し、執刀する医師は手術でその画像を頭の中で思い返しながら、金属のネジを入れていました。O-arm導入後は、手術中にリアルタイムで患者さまの骨の形態情報を確認し、脊椎を固定するためのネジをより正確に挿入することができるので、さらに安全な手術が期待できるようになりました。

O-arm
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合併症などへの不安から、脊椎手術に積極的になれないご高齢の方は少なくありません。全身麻酔での手術になれば、もちろんリスクはゼロではありません。高齢になれば、高血圧や糖尿病などの薬を飲まれている方も多く、入院の際には他科の医師との連携も必要になりますし、手術に耐えられる心肺機能があるか内科の医師の診断が必要になります。
当センターでは、患者さまに対して手術のリスクやメリット・デメリットをしっかり説明して、患者さまご自身に手術を受けるか否かを判断していただきます。高齢の患者さまの手術も多数行ってきており、他の診療科との連携も含め比較的安全に手術を行える環境が整っているので、自信をもって対応できるということをお伝えしたいと思います。

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プロフィール

日方 智宏(ひかた ともひろ)

日方 智宏(ひかた ともひろ)
2000年3月慶應義塾大学医学部卒業。
2000年5月慶應義塾大学医学部整形外科学教室入局、2009年3月慶應義塾大学医学部大学院博士課程(整形外科学専攻)修了、2012年4月慶應義塾大学医学部整形外科助教。
2016年4月より北里大学北里研究所病院整形外科医長、脊椎センター副センター長。2016年11月北里大学医学部整形外科准教授。2017年4月北里大学北里研究所病院整形外科部長、脊椎センターセンター長。2018年7月北里大学北里研究所病院病院長補佐、現在に至る。