文字サイズ
拡大
標準
背景色

北里研究所病院は本年1月に最新の外科手術支援ロボットHugo(ヒューゴ)を導入しました。
Hugo導入により患者さまにこれまで以上に安全で精密な治療を提供してまいります。

外科手術支援ロボットとは

泌尿器科において内視鏡を使用する腹腔鏡手術は、ほぼすべて外科手術支援ロボットを使用するロボット支援手術の適応となります。対象疾患は悪性腫瘍が多いですが、尿の流れが悪くなる腎盂尿管移行部狭窄症という良性疾患の形成手術も対象です。当院では前立腺がんの手術を中心に使用しています。
ロボット支援手術は、術者がコンソール(操作卓)でモニタに映る拡大可能な立体画像を見ながらロボットアームを操作して行います。腹腔鏡手術の場合は手術を担当する術者は両手で2本の鉗子しか持てませんので、カメラを持ったり、手術の場の固定は助手が担当します。それがロボット支援手術では、術者が4本のロボットアームを操作することができます。1本はカメラに、残る3本は鉗子(手術器具)につながっています。もっとも適切なカメラの位置と手術の場を術者自身が作り、手元のスイッチで操作するロボットアームを切り替えながら手術を行います。
また、ロボットアームにつながった鉗子は、通常の腹腔鏡手術の鉗子よりも自由度が高く指先同様の精密な動きが可能です。そのため、腹腔鏡手術よりさらに繊細な手術が可能となり、出血量が少なく患者さまにとって負担が軽くなるという利点があります。さらに、手術後の尿失禁発症率低下や、勃起機能温存率の向上も期待できます。ロボット支援手術も保険適用となるほか、収入に応じて医療費の負担を軽減できる高額療養費制度がご利用いただけます。

当院で導入したHugoの特長

世界で最も使用されている外科手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、2012年より保険適用で手術が行えるようになりました。2020年には国産のhinotoriが販売され、2022年12月にHugoが販売されました。
Hugoは発売されて間もないため症例数もまだまだ少なく、既存のダヴィンチやhinotoriとの比較は難しいのですが、大きく違う点がいくつかあります。
ひとつはオープンコンソールであることです。ダヴィンチやhinotoriは分厚い覆いに頭を入れモニタを覗き込んで手術を行うため、画面以外の情報の確認が難しく、手術室内のトラブルに気づきにくいという難点があります。また、手術中ずっと額を覆いに押しつけ前傾姿勢でいるため、術者の首に負担がかかる可能性があります。Hugoはパソコンのようなモニタを使用するため、術者が手術室全体を見渡しながら安全に手術を行うことができます。
また既存の2機ではひとつにまとまっていたロボットアームがそれぞれ独立しているため、設置位置の自由度が高いことも利点として挙げられます。
さらに、Hugoが腹腔鏡手術関連製品を多数販売する世界でも大手の医療機器メーカーの製品である点も、今後さらに術者のニーズに応えてくれるであろうという信頼と期待につながっています。

外科手術支援ロボット
外科手術支援ロボット_02
外科手術支援ロボット_03

ロボット支援手術の可能性

前立腺がん手術は、特に都心ではロボット支援手術が標準化されており、外科手術支援ロボットを持たない病院の手術件数はどんどん減少しています。
世界的に見て日本はロボット支援手術の導入が進んでおり、操作に必要な資格を有する医師も比較的多いと思います。一方、外科手術支援ロボットの保有率を病院規模で見てみると、大学病院が9割、500〜800床で8割、300〜500床で3割、300床未満では14〜15%と規模によって大きく差があります。急性期であれば300床未満でも前立腺がん手術を行う病院は少なくありませんが、外科手術支援ロボットは非常に高額であるため、病床数の少ない病院にとってはなかなか導入に踏み切れないという事情があります。
2019年にダヴィンチの特許が切れたことにより、現在さまざまなメーカーにより外科手術支援ロボットが開発されています。市場競争が進めば価格帯も含めて病床数の少ない病院でも導入しやすくなり、より多くの患者さまにロボット支援手術が提供できるようになるでしょう。
そのさきがけとなるべく病床数約300床の当院はHugoの導入に踏み切りました。導入してまだ4ヶ月ですが順調に手術件数を伸ばしています。

外科手術支援ロボット_04

当科は、より安全で精密なロボット支援手術を行うのはもちろん、温存できる機能をなるべく温存し、術後の患者さまの生活の質を考慮した治療を提供しております。是非、ご相談ください。

プロフィール

田畑 健一(たばた けんいち)

田畑 健一(たばた けんいち)
1998年3月北里大学医学部卒業。
1998年5月北里大学医学部泌尿器科学教室入局、2003年8月北里大学医学部泌尿器科助教。2004年10月米国ベイラー医科大学留学。
2011年3月北里大学医学部博士課程(癌薬物療法専門医コース)修了。
2012年4月北里臨床研究センター講師、2013年4月北里大学医学部泌尿器科講師、2022年10月北里大学北里研究所病院泌尿器科部長、2022年12月北里大学医学部泌尿器科准教授、現在に至る。
日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本臨床腫瘍学会 癌薬物療法専門医・指導医、泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(Hugo、daVinci)。