2017年7月、体外受精(IVF)治療を開始した婦人科の部長を務める、杉本到医師。 やさしい笑顔と穏やかな物腰で診療に向き合う姿は、多くの患者さまから信頼を得ています。患者さまに寄り添った医療を提供したいと語る杉本医師にめざす医師像、婦人科診療について聞きました。
――婦人科の医師になったきっかけは
ありきたりではありますが、父が医師で、産婦人科医でした。父を身近で見ていて、医師という仕事は良いところも悪いところもあると思いましたけれど、その背中を見たからというのが最初のきっかけでしょうか。
産婦人科を専門にしたのは、父と同じ道をということではなくて当初は他の科を専門にすることも考えていました。産婦人科は個人的なイメージですが、いろいろな年代の疾患を継続的に診られる分野だと思っています。
例えば、若い頃にはホルモン異常による生理不順が、20代~30代には妊娠や出産が、40代になると子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が増えてきますし、50歳を過ぎれば更年期障害が、60歳を超えると子宮脱などの病気が出てきます。 1人の患者さまを経年的にさまざまな角度から診られる部分がとても特徴的で、私が専門にしたのもそういった部分が気に入ったからです。
――産婦人科のさまざまな分野を広く学んだ研修時代
何かの領域を極めるのも一つの道ではありますが、私は「産婦人科の色々な領域を診療できる医師になりたい」と思ったので、研修では「がんに力をいれている」、「生殖・不妊に強い」などの特色のある診療をしている医療機関で研修をさせてもらいました。
印象深いのは、荻窪病院での研修。この病院は日本で4番目の体外受精児の出生例を持つ、生殖・不妊でとても有名な施設です。 ここでは当院にはない産科があり、不妊治療でできた赤ちゃんを取り上げる経験もしました。とても感動的で記憶に残っています。
――患者さまにやさしい治療を
医師として、常に患者さまのためになることを念頭においてきました。また、「産婦人科のいろいろな領域を診療できる医師になりたい」という自分自身の目標のために修錬を積んできました。 そのなかで医師としてターニングポイントとなったことを特に取り上げるならば、腹腔鏡(内視鏡)手術の技術認定医を取得したことと体外受精(IVF)治療を当院で開始したことがあげられます。
――患者さまの負担が少ない腹腔鏡(内視鏡)手術
腹腔鏡(内視鏡)手術は、なにより患者さまへの負担が少ないのが最大のメリットです。 私が医師になった頃は、腹腔鏡手術はあまり行われていませんでした。その頃に腹腔鏡手術を受けた患者さまが術後にあまり痛みを訴えず、早く元気になって帰るのを目の当たりにして、これを極めたいと思ったのがはじまりですね。
腹腔鏡は産婦人科の専門領域の中で確立した一つの領域ですが、その他にも生殖(不妊)や腫瘍(がん治療)などさまざまな領域に関わるものです。 どんな領域もカバーできる医師になるという思いがありましたので、腹腔鏡もできないとダメだと思いスキルを磨きました。
もちろん腹腔鏡手術に向いていない疾患や病状もありますので、全てを腹腔鏡手術で・・・とはいきませんが、患者さまの負担を軽くするため、状況に応じて積極的に治療に取り入れています。 その中で日本内視鏡外科学会や日本産科婦人科内視鏡学会の腹腔鏡技術認定医という資格は、持っていると手術がうまいとか、持っていなければ手術ができないという資格ではありませんが、患者さまが安心して治療を受けていただく一つの目安となるものと考えています。
――需要の高まる体外受精(IVF)治療の開始
晩婚化や晩産化の影響か、子どもを望んでいるが授からず不妊治療を始められる方が増えています。 当院の不妊外来ではこれまでタイミング治療から人工授精までの一般不妊治療を行ってきましたが、2017年7月より新たに体外受精(IVF)治療を開始しました。
今までは当院で手術してもその後に体外受精を希望する方は他の施設で治療を受けねばなりませんでしたが、これにより当院で継続して治療を続けられるようになりました。 体外受精(IVF)に興味のある方を対象として無料の妊活学級を開催して安心して治療にのぞめる環境を整えています。
当院を受診した方に継続的な医療を提供するための、腹腔鏡手術であり、体外受精(IVF)治療だと考えます。 さまざまな年代、疾患の患者さまを多角的に治療できるような婦人科にしていきたいですし僕自身もそういう医療を目指しています。
杉本到(すぎもと いたる)
婦人科部長
1991年 慶應義塾大学医学部 卒業。日本で4番目の体外受精児出生例をもつ荻窪病院やNHO栃木医療センター等で研修を行い、2013年より北里研究所病院 婦人科部長に着任。
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 非常勤講師。専門は、腹腔鏡手術、子宮内膜症、不妊症。日本産科婦人科学会(産婦人科専門医)、日本産科婦人科内視鏡学会(腹腔鏡技術認定医)、母体保護法指定医、日本内視鏡外科学会(産科婦人科技術認定医)
休日はランニングで体力づくりと気分転換。病院の近所を走ることも。