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費用負担を抑えつつより希望に近い結果を得られるよう保険適用の手術を組み合わせることができる選定療養対応の多焦点眼内レンズを豊富に取り揃えています。

白内障の治療には手術が必要です

加齢に伴って目の機能が低下することをアイフレイルといいます。人は情報の多くを視覚から得ているため、アイフレイルは体や心の健康、社会との関わりにも悪影響を及ぼします。
なかでも白内障は、加齢によって起こりやすくなる病気のひとつです。目のレンズの役割をする水晶体が濁ってしまう状態で、60代で7割、80代ではほぼ100%が発症します。点眼薬や内服薬によって症状の進行を遅らせることはできますが、一度濁った水晶体を戻すことはできませんし、視力を回復させることもできません。そのため日常生活で不自由を感じる場合は、水晶体を取り除き眼内レンズを挿入する手術を行うことになります。

単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ

眼内レンズには、保険適用の単焦点眼内レンズと、保険適用外で自費扱いの多焦点眼内レンズがあります。
単焦点眼内レンズは、文字通り1か所にピントが合うレンズです。ピントが合う距離は鮮明に見ることができますが、それ以外を見る時は眼鏡が必要になります。ピントを中間距離に合わせてさらに左右の目でずらし、明視域という良く見える範囲を広げることが可能です。乱視矯正などの付加価値のついたレンズもあります。
一方、多焦点眼内レンズの多くは3焦点のレンズで、眼鏡なしでも遠くからある程度近くまでを見ることができます。左右の目のピントを少しずらして、明視域をさらに広げるという方法もあります。ただし、単焦点に比べると、同じ視力でも鮮明さに欠ける場合があり、夜間に街灯がまぶしく見えたり、光が広がって見えるといったデメリットもあります。誰にでも合うわけではありませんが、眼鏡を極力使わない生活ができるという大きな利点があります。

選定療養費を使って費用を抑える

2020年より、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は「選定療養」の対象となりました。これにより、国内で承認された多焦点眼内レンズであれば、従来は全額自費であった手術費用の一部が保険適用となり(レンズ代は自己負担)、費用を抑えて手術を受けられるようになりました。しかし、すべての医療機関が選定療養を導入しているわけではなく、国内で承認されたレンズであっても医療機関によっては全額自費になってしまうこともあるので注意が必要です。
当院では選定療養による白内障手術を実施しており、多種類の多焦点眼内レンズを取り揃えています。新しく開発されたレンズも導入しており、患者さまのご要望に幅広く対応できます。
眼内レンズは、一度手術を受けたら交換することなく生涯にわたり使用するものです。希望する見え方やライフスタイルに応じて最適なレンズは異なりますので、医師と相談し、それぞれのメリット・デメリットを十分に理解したうえで慎重に選ぶことが大切です。

白内障の手術が生活の質をあげる

60代では、多焦点眼内レンズを選ぶ方が増えています。特に強度の近視や遠視がある場合、白内障と同時に屈折異常も改善でき、裸眼で快適に過ごせるようになる利点があります。ただし、多焦点眼内レンズは遠近両用眼鏡と同様に慣れが必要で、年齢が上がるほど慣れるまでに時間がかかることがあります。
白内障手術は日帰りまたは1泊で受けられる安全性の高い手術ですが、高齢になるほどリスクは高まります。視力低下がある場合は、早めの手術をお勧めします。

患者さまにより良い医療を

当院は、幅広い眼科疾患に対して高度な医療を提供しています。2025年4月には外来を2階から1階へ移転し、スペースが広くなったことで診察室も2部屋から4部屋に増えました。また、常勤医師が7名体制となり、外来や手術の待ち時間も短縮されています。患者さまにより快適な環境で受診いただけるようになったと自負しております。
今後もさらに快適な診療体制を整え、「目のことは北里研究所病院に任せれば安心」と言っていただけるよう努めてまいります。
加齢に伴い増えてくる目の病気は白内障以外にもたくさんあります。気づかないうちに進行するような疾患もありますので、年に1回は眼科を受診されることをお勧めします。

プロフィール

川北 哲也(かわきた てつや)

川北 哲也(かわきた てつや)
病院長補佐・眼科部長

1995年3月 金沢大学医学部 卒業、1995年4月 小牧市民病院病院ローテート研修。
1996年4月 名古屋大学医学研究科博士課程入学、2000年4月 東京歯科大学市川総合病院 角膜フェロー、2000年5月 名古屋大学医学研究科博士課程修了、2002年6月 Ocular Surface Center(マイアミ フロリダ州)留学。2005年6月 東京歯科大学市川総合病院 講師、2007年5月 慶應義塾大学医学部眼科 専任講師。2016年4月 北里大学北里研究所病院 眼科部長、2018年7月 北里大学北里研究所病院 病院長補佐(兼務)、2022年1月 北里大学医学部眼科学 准教授、2024年6月 北里大学医学部眼科学 教授。