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高血圧は生涯コントロールが必要です。だからこそ、正しい知識を身につけましょう。

高血圧治療ガイドラインの改訂

まずは、高血圧に関する最新のトピックとして、昨年、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインが6年ぶりに改訂されました。
日本人の3人に1人以上は高血圧といわれますが、血圧が高くなると脳卒中・心臓病・腎臓病・認知症の発症リスクが高くなり、日常生活が著しく制限されたり、命の危機につながることもあります。血圧を下げることにより病気のリスクが下がるという科学的根拠が数多く示されているにもかかわらず、日本においては血圧コントロールはまだまだ不十分なのが現状です。そのような背景から、血圧に関わるそれぞれの人の具体的な血圧を下げる行動につながるようなガイドラインとすることを方針として作成、改訂されています。
本ガイドラインでは、降圧目標が年齢を問わず原則130/80㎜Hg未満に統一されたことが注目されました。しっかり血圧を管理することで合併症の発症予防・進展防止を目指すことが示されています。しかしそれは画一的な治療を推進するという意味ではなく、同時に個々の患者さまの疾病やリスクを踏まえて個別化・最適化された治療を行うことに重きを置いています。
本ガイドラインには高血圧の正確な情報を広く知ってもらうための新しい試みとしてガイドラインから基本的な事項を抜粋した「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」が取りまとめられています。学会のHPにも掲載されているので是非ご覧になってください。

高血圧の原因と治療

高血圧には、原因が一つに特定できない本態性高血圧と、特定の疾患や薬の副作用などが原因となる二次性高血圧があります。
二次性高血圧は高血圧全体の10~15%程を占めるといわれ、より合併症のリスクが高いです。年齢が若い場合や、問題なかった血圧が急に高くなる場合、血圧のコントロールに難渋したり臓器障害が強い場合など、特に積極的に二次性高血圧を疑い鑑別を進めていきます。二次性高血圧でもっとも多い疾患は、原発性アルドステロン症です。副腎から分泌されるアルドステロンというホルモンが自律的に過剰分泌される病気です。アルドステロンは血圧が下がらないように維持する働きをもつホルモンですが、これが分泌されすぎることで高血圧となるわけです。副腎の腫瘍が原因となってアルドステロンが過剰分泌されている場合は、手術を行い腫瘍を摘出することで完治も期待できます。
本態性高血圧は遺伝や環境など様々な要因が関与しています。減塩、運動、肥満の解消、節酒などの生活習慣の改善がとても大切です。生活習慣の改善は予防にも良いとされます。リスクの低い患者さまの場合は、まずは生活習慣を改善して血圧が下がるか様子をみるのですが、血圧の程度や併存疾患、既往症などによりリスクが高いと診断されたり、生活習慣の改善を試みても血圧が下がらない場合は、薬物治療もあわせて行います。患者さまの状態にあわせて、適切な薬剤を選択、組み合わせていきます。血圧を下げる降圧剤は、服用を始めると多くは長期にわたって飲み続けることになるので、抵抗を感じる方もいるでしょう。また、副作用を怖いと思うこともあるかと思います。しかし、降圧剤は安全面で優れたものが多い薬剤です。服薬によって血圧を下げて合併症のリスクを回避することは副作用以上に大きなメリットが考えられ、ご自身のためにも、しっかりと治療を続けていただければと思います。

高血圧と密接に関係する慢性腎臓病(CKD)

高血圧と腎臓の関連についてもお話します。高血圧は様々な臓器・病態と密接に関わっていますが、腎臓ともとても深い関係にあります。腎機能の低下や尿検査の異常などが3か月以上慢性的に続く状態を慢性腎臓病といいます。慢性腎臓病は進行すると末期腎不全となり透析が必要となりますが、そこに至らずとも慢性腎臓病が進行するほど心臓病などの合併症や死亡リスクが上昇することが知られています。今や日本の成人5人に1人が慢性腎臓病といわれますが、糖尿病と共に高血圧が慢性腎臓病進行の大きな要因となっています。
高血圧の持続などにより動脈硬化が進行すると血流低下が引き起こされ腎臓は徐々に硬くなっていき、腎機能は落ちていきます。これを腎硬化症といい、慢性腎臓病の原因の中でも大きな割合を占めます。新規透析導入の原因疾患としても腎硬化症は近年増加傾向にあり、糖尿病性腎症に続き2位が腎硬化症です。また、腎臓は血圧を調整する上で大事な役割を担っており、慢性腎臓病が進展することで二次的に血圧を上昇させることが知られています(これも先ほどご説明した二次性高血圧の一つです)。高血圧は腎機能を増悪させ、腎機能増悪はさらに血圧上昇を招きます。このように高血圧と慢性腎臓病は密接に関係しているのです。
高血圧も慢性腎臓病も障害が進んだり合併症をおこさない限りほとんど自覚症状がなく、自身が病気だと自覚していない人がとても多いと思われます。ぜひ健康診断を受けてください。血圧測定や尿検査(尿蛋白や尿潜血)・血液検査(血清クレアチニン値)などによって早期発見することができます。また、早い段階から介入することでその後の進展を防いだり合併症のリスクを大きく下げることができます。
高血圧も慢性腎臓病も生活に密接に関わり長く付き合っていく必要のある疾患ですが、当科のスタッフが患者さまに寄り添い伴走していきますので、がんばって治療を続けてまいりましょう。

プロフィール

高畑 尚

高畑 尚(こうはた なお)
腎臓・高血圧内科医長

2010年慶應義塾大学医学部卒業。
慶應義塾大学病院等で研修後、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科に入局。
腎臓や内分泌の臨床に幅広く従事すると共に、二次性高血圧に関する基礎及び臨床研究に携わる。医学博士。
近年は研修医や学生の指導に取り組み、後進の育成にも努める。北里研究所病院教育賞受賞。