階段や坂道で息切れがする、咳や痰が続く――
そんな症状を「年齢のせい」と思っていませんか。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は早期発見と適切な治療によって
進行を抑えることができる病気です。症状や治療についてご紹介します。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、気管支に炎症が起こり、肺の細胞が破壊されて、呼吸がしにくくなる病気です。階段や坂道を上ったときに息切れがしたり、咳や痰が多くなるという症状があります。主な原因は喫煙で、禁煙をしてから何年か経過してから症状が顕在化するという方も少なくありません。
日本では約500万人のCOPD患者がいると言われていますが、治療を受けているのはごく一部にとどまります。一般の健康診断には肺機能検査の項目がないことも一因ですが、病気自体の認知度が低いこともあり、症状があっても「年齢のせい」「体力が落ちたから」と思い込み、見過ごされてしまうケースが少なくないのです。
COPDの病態は患者さまによってかなり異なります。肺胞構造の破壊による肺気腫が主体の方、慢性気管支炎の症状が強い方、喘息のようなアレルギー性の炎症を伴う方もいます。そのため、患者さまの症状にあわせた治療が必要です。
治療には薬物治療と非薬物治療があります。薬物治療の中心となるのが気管支を広げて呼吸をしやすくする気管支拡張剤などの吸入薬です。吸入薬は飲み薬などと比べると全身への影響が比較的小さく副作用も少ない治療法です。喘息を合併している場合は吸入ステロイド薬を使用したり、重症の方であれば生物学的製剤などの注射薬を併用することもあります。
一度壊れてしまった肺を元の状態に戻すことはできませんが、治療を継続することで肺機能の低下を抑えて、症状の悪化を防ぐことが期待できます。特に重要なのは、症状が一気に悪くなる増悪(ぞうあく)を防ぐことです。増悪を起こすと息切れや痰、咳などが強くなり、場合によっては入院が必要になることもあります。増悪を繰り返すと肺機能が低下して、回復しても元の状態に戻りにくくなってしまいます。増悪を繰り返さないことが、日常生活を長く維持するうえでとても重要になります。
また、COPDの患者さまは高齢の方も多く、吸入薬によっては使いにくい場合があります。患者さまの状態にあわせて適切な吸入薬を選択し、必要に応じて薬剤師とも連携して吸入指導を行いながら、無理なく続けられる治療を目指します。
「全身の病気」とも言われるCOPDは、さまざまな合併症や併存症に注意が必要です。肺の合併症としては、肺がん、間質性肺炎、肺高血圧症、喘息などがあります。全身の併存症としては、心血管疾患や認知症やうつ病との関係が指摘されているほか、骨粗鬆症やフレイルが発症しやすくなることがわかっています。
フレイルとは加齢とともに起こる心身が弱った状態のことです。COPDでは、加齢に加えて、息苦しさによる活動量の低下や全身性の炎症などにより、筋肉量や筋力が低下しやすくなります。また、呼吸に必要なエネルギーが増えることなどから体重が減少することもあり、フレイルを合併する方が少なくありません。
フレイルはCOPDの経過や予後にも影響します。筋力が低下するとさらに活動量が減り、それによって筋力や体力が一層低下するという悪循環に陥ることがあります。そのため当院では、主にリハビリテーション科と連携して、非薬物療法として呼吸リハビリテーションを行っています。呼吸リハビリテーションでは、患者さま一人ひとりにあわせて呼吸しやすい姿勢や呼吸法の指導、歩行や筋肉トレーニングなどの運動療法を中心に行います。また、時に効率の良いエネルギー摂取方法を栄養課に相談し栄養指導なども行います。
加えてCOPD発症後もたばこを止められない患者さまに対してはニコチン依存が原因として考えられますので、禁煙外来においてサポートしています。
治療を続けていても残念ながら病気が進行して、呼吸不全となり酸素療法が必要になる場合もあります。その場合も看護師を含め多職種が連携して、患者さまが住み慣れた環境で生活を続けられるよう支援していきます。
COPDは何年もかけて徐々に悪化していくため、患者さま自身では病気に気づきにくい場合があります。現在60~70歳代で、長年の喫煙歴、息切れや咳、痰などの症状のある方は、質問票で簡単にCOPDの可能性を調べることができますので、下の二次元コードにアクセスしてみてください。
COPDは一度進行すると元に戻すことが難しい病気です。しかし、早期に発見して適切な治療を継続すれば、肺機能の低下を抑えて、生活の質を維持することが期待できます。息切れしやすくなった、咳や痰が増えたと感じたら、それは体からのサインかもしれません。気になる症状がありましたら、ぜひ、呼吸器内科を受診してください。ご家族や周囲の方からも受診を勧めていただければと思います。


奥隅 真一(おくずみ しんいち)
呼吸器内科副部長、医学博士
2012年4月 山梨県立中央病院 初期臨床研修医、2014年4月 慶應義塾大学 内科学 専攻医、2016年4月 慶應義塾大学 医学部 呼吸器内科 助教。
2021年4月 日野市立病院(内科)、2023年5月 国立大学法人東京農工大学 大学院農学研究院 応用生命化学部門 食品機能学研究室(国内留学)。
2025年4月 北里大学北里研究所病院 呼吸器内科。